はせ

セールスマンのはせのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
3.5
『最前線の映画を読む』で知って鑑賞。
これまた自分の浅学さに恥じ入る作品だった。イランについて、革命時の大使館脱出を描いた『アルゴ』や、国際ニュースで核開発問題くらいでしか聞いたことがなかった。イラン国内の革命後の状況や映画製作の困難さなどさっぱりわからぬまま本作を鑑賞してしまったので、やはり表面的な部分しかなぞれなかった。「イスラム教社会だから女性の地位が低いのかな」くらいのぼんやりした認識しか持ってなかったんだけど、実際のイラン社会は女性の人権否定にも等しいイスラム原理主義の男根社会だった。西欧的な都市生活を送る主人公たちも例外なく弾圧されるわけで、性暴力被害に遭っても警察に通報できない。障害者や女性に優しく、生徒たちに慕われる主人公が、根本にある暴力的な男性主義に堕ちていく様は胸が締め付けられる。
この映画を観て、舞台背景や劇中劇『セールスマンの死』劇中映画『牛』などの意味を知りたいなら、『最前線の映画を読む』のセールスマンの章は必ず読むべきだと思う。
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