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ギミー・デンジャーのまぁやのレビュー・感想・評価

ギミー・デンジャー(2016年製作の映画)
3.8
ジム・ジャームッシュ監督作品の鑑賞の流れで手に取ったドキュメンタリー作品。

イギー&ザ・ストゥーズ、監督が敬愛するロックグループであり、今ではロック界に最も影響を与えた伝説のグループとのこと。彼らの名前を耳にするのは初めてだったので、興味深く鑑賞した。

作品冒頭では、ジム・ジャームッシュ監督の声と姿を垣間見ることが出来る。

本作ではドキュメンタリーそのものの出来映えとして、監督の遊び心満載な演出に度々引き込まれ楽しませてもらった。イギー・ポップの語るエピソードはそのままでも人を惹き付けるが、内容に臨場感や解りやすさをプラスするため、過去の映画やニュースの映像シーンを効果的に差し込んでくる。アニメでクスリとさせたかと思えば、報道映像から深刻な場面を切り取って臨場感を持たせるなど。一瞬たりとも飽きさせることなく、彼らの人生に伴走させてくれた。


そして、イギー&ザ・ストゥージズについては、音楽を深く掘り下げるというより、彼らの生き様にスポットライトを当てていて、一人ひとりの個性が浮き彫りにされる。特にイギーの生き様を幼年期から追っていくのだけど、好奇心旺盛で、感覚的に伸び伸びと生きてきたのがよくわかった。

トレーラーハウスで育ち、リビングでドラムを何時間も叩き続けた少年時代。両親はイギーを叱ることもなく、自分達の少し広めの(トレーラーハウスだからたかが知れてるんだけど、、)寝室を提供したらしい。そんな両親を最高の宝物!と誉め称えていたが、わたしも同感である。イギーの可能性にキズをつけることのなかった稀な親!

アシュトン兄弟との出会いも大きかった。彼らの控えめだけど堅実な音楽への情熱がうまい具合にバンドのバランスを取っていたのだろうと思う。

イギーは興奮がMAXになると度々会場にダイブしていたが、歌が止んでる間もメンバー達はうつむき加減でひたすら演奏を続けていた。メンバーの冷静さと安定感のおかげで、イギーは感覚の赴くまま自分を表現出来たのだろうなと感じる。

そして、わたしはイギーのダンスに瞠目してしまう。柔軟な肉体、自然と波打つ身体がスネークのよう。どんな動きもモダンダンスのようで、ダンサーになっていても成功したんじゃない?と感じる。

リスペクトするミュージシャンから政治的なメッセージを帯びた音楽活動への誘いを受けたときも、言葉よりも先に床で"でんぐり返し"したというのだから、、言葉よりも身体での表現が先にくるタイプなんだなぁと、可愛いやら少し笑ってしまった。

イギー&ザ・ストゥーズがスタートして、1973年に解散に至るまで、自らを燃やし尽くした若い彼らに刹那の生々しい生を感じる。

晩年のイギーが紳士的にインタビューに答える様子の対比が面白かった。
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