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東京ウィンドオーケストラのsenaのレビュー・感想・評価

東京ウィンドオーケストラ(2016年製作の映画)
4.0
試写会で映画を観るのははじめてでした。

とりわけ印象に残ったのは、映像の色味、質感です。現実に極めて近い色合いで、スクリーンの中とこちら側の空気が違和感なく繋がっていました。
光量も、色味も、いじりすぎていない。
だからといってスマホのカメラで撮ったような、どこか日常と乖離し、色が醒めたような無機質さはなく、
例えば好きな人を見つめる時の感覚に似ているような、
美しさ、あたたかさは残しつつも、それが現実のものである、という確信めいたものを味わうことができました。
まさに「肉眼」です。

中西美帆さんがお顔を伏せた時の、オレンジの光に透ける睫毛がとても綺麗で、
カメラが、まるで恋をしているように、ひたむきに彼女を捉えていました。
恋愛映画ではありませんが、そう感じた場面が時々ありました。

繰り返しになりますが、この映画に、(余計な)恋愛要素は全くありません。
男と女が登場したら必ず恋愛させる文法にやや疲れていたので、嬉しい驚きでした。

説明的ではないのに、人物の関係が非常に分かりやすい。
肩の力が入っていなくて、ゆるゆると流れていく時間、そしてハプニング。

オーケストラの団員たちの台詞の間合い、劇団っぽいなあと思っていましたら、本当に劇団の方だったのですね。
テンポよく、作品の笑いに引き込んでいく演技、息ぴったりでした。

若者の感性に寄り添うような「笑い」かと思っていましたが、観客席には中高年の方が多かったにもかかわらず、あちこちで大きな笑いが起こっていたので、
どの世代も楽しめるのだな、と感じました。

中西美帆さん、監督のトークも見ることができましたが、御二方とても素敵でした。
中西さんの瞳がきらきらしていました。

1時間くらいの短い作品です。疲れず観ることができます。
どきどきしたのは何故でしょうか。
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