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ヒップスターのJのレビュー・感想・評価

ヒップスター(2012年製作の映画)
5.0
・物語★★★★★
・配役★★★★★
・演出★★★★★
・映像★★★★★
・音楽★★★★★

“後ろがどっちか分からなかったから、前を向けなかったんだ。”

ライブハウスでの演奏シーンから始まる本作は、一見して、ひとりのシンガーソングライターとその家族の“愛と絆”の物語だ。

だが本作の真のテーマは、“自分自身との正直な向き合い方”、ひいては“幸せの見つけ方”なのだろう。

孤独で臆病、故に独りよがりで、他人に対し不器用なまでに攻撃的な接し方をするシンガーソングライター、“ブルック・ハイド”。

そんな捻くれ者であまのじゃくな彼が素直に自分を表現できるのは、音楽の中、あるいは同じ喪失感を抱えた3人の妹たちに対してだけだ。

“この場所で幸せが来るのを待っているんだ”

そう語っていた彼が、父親との和解、傷つけてしまった親友への謝罪、そして何よりも自分自身の“再生”に向けて踏み出す姿に、“幸せ”は待つものではなく、自ら求めて見つけ出すものなんだと考えさせられる。

「ショート・ターム」の監督・脚本で知られるD・クレットンのデビュー作。
「ショート・ターム」と同様、いやそれ以上に、じんわりと心に沁み込んでくる、優しくて温かい物語だった。

アコースティック・ギターにのせて弾き語られる曲たちは、作品に彩りを添えるばかりでなく、まぎれもなくストーリーの一部を構成している。

ネットで話題のインディーズアルバム(という設定)の「ケイナインズ」の中でも、ラストシーンのあの曲の余韻が凄まじい…。
劇中ではチャイルド・ルームで歌われる“ブラック・ベイ”もいい。一緒に歌う子どもたちの声は、まさしく天使のようだった!

舞台で活躍しているという主演のD・ボガートの演奏も見事だが、実際のミュージシャンを配したキャスティングも本格的で◎。

サンディエゴのインディミュージックシーンだけでなく、アートシーンをも描いている作品だけあって、映像の感性も素晴らしい。

タイトルクレジットのバックになる自転車のシーンや、ポスターにも描かれる“ピンクのイルカ”、クライマックスのホームビデオなど、いずれも特に印象深い。

(※以下、ストーリーの重要部分についての言及アリ)

演出・脚本も、「ショート・ターム」と同じくやはり見事だ。
シーンやセリフに一切の無駄がなく、溜息が出るほど感心させられる…!

日本人にとっては特に印象的なシーンも。

忘れ難いあの震災、そしてそれにまつわる“ミキ・エンドウ”の実話。
これらがきっかけとなってブルックが初めて感情を曝け出すシーンには、感じるものが多かった。

震災と津波のシーンが、クライマックスにおける“波を乗り越える”に繋がっていくあたりには、鳥肌がたった。
ブルックが抱える母の骨壷が波にさらわれたあと、父が見せる優しさと妹たちの協力に、この家族の“愛と絆”を感じた。

何より、確かな幸せに向かって前進していくにつれて穏やかになるブルックの表情が印象的。

意地になって凝り固まりそうなときほど、立ち止まってニッコリ笑ってみる…。
それって実はとても重要なことなんだということを、この映画から思い知らされたような気がする。


劇場用パンフ★★
全2ページ。
というか大きめのチラシのつづら折りって感じ…ʕ⁎̯͡⁎ʔ༄
内容は…公式サイトを印刷しただけやんけ!(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
いい映画だったからユルスけど、これで400円はちと高いಠ_ಠ
チケットを模したとも思える装丁だけど、書かれた数字はまさかのシリアルナンバー⁉︎
J

J