でんぷん

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のでんぷんのレビュー・感想・評価

4.5
思春期の少年少女の傷と成長。それぞれの抱える不安がモンスターになって牙を剥く。見終わるとジクジクした喪失感とともに温かいものが心に残る。

とにかくそれぞれの子供たちが愛おしい。とくに太っちょのベン。虐められても卑屈になるどころかどこまでも紳士でロマンチストで積極的。将来絶対モテるやろベン。男子がビビってても先頭に立っちゃうベバリーもいい。ここまでキャラクターに惹かれるともう、負けだ。
それぞれの個人的な傷と呪われた土地の湿った空気感が相まって、なんとも居心地の悪いノスタルジアが立ち現れる。原初的で不条理な恐怖と、垣間見える社会の残酷さへの恐怖、その両方を感じ取れる微妙な年頃こその世界観が見事である。

ペニーワイズは序盤でエイリアンみたいな牙を剥き出し、「ただのお腹すかせたクリーチャーですよー」とアピールしてくれるので、得体の知れない怖さはない。どっちかというとビックリ箱的な爽快な怖さ。見慣れるとこいつもかわいい。
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