そりっどあいぼりー

ハクソー・リッジのそりっどあいぼりーのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
-
戦闘が始まるまでの前半部がとにかく面白かった。フルメタルジャケットばりのいびりを通じて、主人公の頑迷とまで言える信仰心を非常に人間的にあぶり出すところも素晴らしいが、なによりも戦争によって精神を崩壊させられた父親の存在が良い(マトリックスでエージェントスミスを演じたヒューゴ・ウィービングが演じる)。息子を戦争に行かせたくない気持ちと、信念を尊重したい気持ちに板挟みになりながらもがく男を抑えた演技で演じきった彼は、こんなに良い役者だったのかと驚いた。
 中盤以降、手足の欠損と内臓のまき散らしが続く強烈な戦闘シーンによって沖縄戦の地獄を描くのはメルギブソンらしくて圧倒される。日本兵と米兵が入り混じった地獄の中で、一人それらの関係性を超えて救済を続けるという行為そのものをあくまでエンターテイメントとして描いていて完璧だと思った。これをPG12として公開する決断もすごい。
 ただしラストがちょっとヒロイック過ぎるかな、と思う。これでは、主人公の救済行為が間接的に"殺戮行為"に加担してしていることをより強調したうえで美化してしまっているのではと感じる。また、救済行為を自分の信仰のためだけに行っていたのではと感じてしまうような気味悪さもあるが、でも逆に彼の行為を批判的にもみれるようにしているともいえるので、バランスが取れてて結局いいのかな(そういえばアポカリプトでもこういう要素があったな)。
 さらに言えば、日本といえばハラキリだろ、と言わんばかりのメルギブソンの悪趣味なサービスシーンはアポカリプトに通ずるモンド映画っぽさを感じさせて、まあそこだけみると良かったけど、この雰囲気の中で出すには少しチグハグな気もする。