Hiroya

ハクソー・リッジのHiroyaのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.0
メル・ギブソン監督の容赦無いゴア描写に痺れる。火炎放射器でヒトを焼き、臓物は丸見えだわ鼠が肉を食むわ蛆虫が湧き出ているわでスプラッタの世界。ハクソーは戦場というより最早焼け野原です。だが不思議と画面から死臭はしなかった(先遣隊の表情は死体そのものだったけど)。それは今回のテーマが衛生兵であるから、だと思う。

「プライベートライアン」よりも凄いと話題の本作、舞台は沖縄・前田高地の戦い。負傷者を助け続けた一人の「銃を持たない」衛生兵を描いた実話だ。「みんなが戦っている中、一人くらい助けるものがいてもいい」このスタンスを決して崩さず、訓練で教わったもやい結びを駆使して実に75人の負傷者を崖から降ろし、救った。中には日本兵もいたという。

150mの崖を登る過酷さや日本兵の屈強さ、冒頭の惹きつけ方が上手い。幼少期の回想もなんだか切なくさせてくれる。弟とのやりとりは「死」の観念について考えさせられる問題のシーンだ。小物の使い方も上手い。ベルトで父にしばかれてた息子は大人になってベルトを止血帯にして助けてます。レンガで弟を殴った兄は下敷きになった人を助けるためにレンガで隙間を作ります。ちゃんと繋がってるんですよね。

主演のアンドリュー・ガーフィールドの好演は見ものだが、個人的には彼の父親役のヒューゴ・ウィーヴィングに注目して欲しいところ。吃驚する程渋かった(いかんせんVのイメージが強い)。
劇中、デズモンド衛生兵を「臆病者」呼ばわりしていたけれど、彼の何処が臆病なの?と思って観ていた。彼は一度も弱音を吐かなかった。でも英雄でもない。彼は神の教えをひたすらに貫いた、強い「信念」の男です。

敵対する日本兵の描き方もそこまでおかしくなかったし(日本語が上手だった)、白旗を揚げて降伏する直前に爆弾を投げる手汚なさはいかにも日本人らしい(褒めてる)。最後にハラキリの場面まであったのが衝撃だったかな。抵抗虚しく炎の海に包まれるだけだったのは日本人としては見てられないんだけど、それでも反撃して米軍人を殺すところではつい日本兵を応援してしま…えないのだ、これが。主人公である衛生兵がヒトを助ける度に、米軍人が倒れてゆくのを見ていられなくなる。しかし、アメリカ万歳一辺倒ではない分まだセーフか。

メイキングも面白い。爆弾はマジで爆発させてたりして…音響が本当にリアルで怖い。メルギブこんなの撮れたんだな。

さて音楽はハリー・グレッグソンの弟、ルパート・グレッグソン・ウィリアムズ。しっかりと兄とハンスの影響を受け(褒めてる)、映画らしい映画音楽でシーンを彩っている。とにかく戦闘での音響が凄かった作品。間違いなく後世に残る1本。
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