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ワンダー 君は太陽のMURSJのレビュー・感想・評価

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
4.0
「外見は変えられなくとも、見る目を変えることは出来る」
この映画が何をワンダー=奇跡と言っているかって、劇中のこのセリフで象徴されています。
あらすじはビジュアルからひと目で分かるように、個性的な外見の少年オギーが外の世界に受け入れられるまでの紆余曲折だけど、面白いのがオギーを太陽=中心として他の惑星たちの視点に次々移り変わり、太陽系のように物語の全体像が構築されていくところ。
オギーの家族をはじめ良識をもった常識人だらけで大きな事件が起こるわけじゃないんだけれど、そのぶん本当はこうするべきなんだけど感情がついていかない繊細で複雑な心が描かれていて、惑星に光と影の両面があるようにこの程度の二面性でも受け入れられるようになることは難しく素晴らしいことなのです。
しかもただの美談では終わらせない。オギーはその年齢では並外れた知性とユーモアをもっていて、それが教育と努力によって得られているからこその自信も持ち合わせています。つまりただ無条件で周囲に受け入れられるべきだなんて甘さではなく、その能力によって正しく評価されるべきだという公平さこそ本質であって、周囲の人々にこれを気づかせ、そしてオギー自身も真に世界に受け入れられたと信じられたことが奇跡なのだと思います。

追記:余談ですが「個性」について小林秀雄曰く、例えば顔や性格など、本人が望まずして持っているもの=強制されたものは個性とは言わない。個性 とは、予め与えられたものを乗り越えようと努力する、その精神のことだそうです。
与えられた私を超えて 「普通」になるために、世界に受け入れられるために、周囲に理解されるために、苦闘する。真に尊重されるべき個性というのは希望だけれど決して甘くはないのです。
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