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RAW〜少女のめざめ〜のmatsushiのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
3.8
個人的な好きと嫌いが入り混じっている感じたことのない面白い作品。「TITANE」のために鑑賞。

演出がすごい。悪趣味の美的センスとでも言おうか。悪趣味だがどこかイカした音楽といい、それに合わせたスローモーション、個性的なアングルとライティング、威圧的なカメラ目線、等々。だが、この演出やばいっしょみたいな才能をひけらかす感じは否めない。たしかに才能はえげつないのだが、なんだろう、上手く言えないが、巨匠たちが使う特殊な演出ほど作品に馴染んでおらずナチュラルじゃないのかもしれない。

キャラクターも設定も舞台も何もかもが現実離れした狂気を孕んでいる。前半はこの狂った世界観が当たり前のように嫌だし、あり得ないと思うけれど、見ている間に麻痺してきてこの狂気が当たり前のように思えてくる。むしろあの民度ゼロの学生たちのように思考が低下して、その狂気が面白くなってくる。そして途中からストーリーにスッと入り込める。なんとも言えない感覚だった。現実世界の設定であることに加えて、この非現実が日常であるかのような世界観が個人的にはどの作品でも大好物なため、それに当てはまる本作も最高だった。一言で言うなれば非現実的なリアリティ。ただ好きになりきれないのは、本筋が始まるのが遅かったり、笑いの角度が合わなかったり、狂気の度が過ぎてなんで?というシーンがあったりと色々思うところがちらほら。

あとエンディングも好きだけど嫌い。意外性やヴィジュアルからくる面白さはあるが、言ってしまえばショートフィルムのような終わり方。面白い奇抜な長編なのに見たあと安いB級ホラー作品みたいな余韻になってしまう。あれをやるなら姉と主人公の関係性をもっとフォーカスしてほしかったと個人的には思う。

カニバリズムという設定、姉妹愛というテーマ、縦社会の獣医学校という舞台、ベジタリアンの主人公等々、とにかく予測できない面白さを詰め込んだ「なんで?」と「まじで?」が浮かぶ不思議な面白さを持った作品だった。

長々語ったんですが、見ながらめっちゃ笑ってしまった(目舐めてるのとか)のでちゃんと好きな作品です。シンプルに見てて楽しかったです。
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