NANAc

浮雲のNANAcのレビュー・感想・評価

浮雲(1955年製作の映画)
3.5
やっぱり、成瀬映画は見ててあまり楽しくない。ただただムカつくかしんどい。

作品としてレベルが高いのは理解できる。高峰秀子と森雅之の演技はすごく良かった。目でこんなに訴えることができるのか、と思わされる高峰秀子の表情。太宰治みを感じる森雅之の雰囲気はキャスティングが完璧だった。

ただ、単純に出てくる男がムカつく。序盤はまだ寄り添える要素があったけど、後半は無理だった。なんでわざわざこれを映画で観なきゃいけないんだろう、と毎度思わされる。
リアルさがなくなるくらい振り切ってたり、逆にユーモアを入れてくれたりすると、まだ受け入れられる。でも成瀬はとことんリアルに地味にやるから、ただただしんどい。

あと、原作未読のほうが映画は楽しめるかもしれない。原作を読んでると、どうしても省略された、描かれなかった内容のことを考えてしまう。本当はこういうことなのに、とか、展開が急すぎる、とか思ってしまう。映画をそまま完成品として受け入れにくくなる。
映画は原作とは別の作品なのに、原作を再現したもの、と思うと、どうしても原作には及ばないと思ってしまう。

林芙美子の原作は全然嫌いじゃないのに、映画になると途端に、ただムカつくだけの男とダメな女になっちゃう。大変残念。
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