浮雲の作品情報・感想・評価・動画配信

「浮雲」に投稿された感想・評価

iPhoneメモのレビュー

3/9(Sat)
浮雲

戦後の荒廃の中で再会する二人は、ただ愛欲のままに流されていく。
インドシナから東京、果ては屋久島。
逃避行にも似た、二人の末路。

二人は一緒に死にたかったのではないか。
二人では生きてはいけない。でもせめて、二人で死ねないだろうか。

二人がもつ棘は、やがてナイフのようにお互いを突き刺していく。
富岡の持つ刃は毒のように、一緒になった女性を殺していく。
富岡の毒は、静子を殺し、妻を殺し、最後はゆき子を殺した。そして、富岡は自分がそうした毒を持っていることに、気づいていたのかもしれない。

そしてその毒の存在に気付きながらも最期まで富岡といることを望んだゆき子の姿に心打たれる。
一

一の感想・評価

3.5
成瀬巳喜男監督作品

戦後の荒廃した日本を舞台に、腐れ縁の男女の愛の顛末を描く

笑っちゃうほど共依存が過ぎる典型的なダメ男とダメ女の感傷的なメロドラマだったけど、さすが成瀬監督の代表的な作品というだけのことはあって、素晴らしく見応えのある映画だった

さすがに『乱れる』ほどの衝撃はなかったけれど、不倫の代償はあまりにも大きく、こちらも辛い未来が最初から見えている絶望映画
昼ドラのようにドロドロした男女関係を、生々しく無駄の無いカットの連続で、美しくそして虚無感満載で映し出し、愛に流される彼女の一途な想いで堕ちていく二人を、観客はただただ茫然と見つめるのみ

森雅之演じる富岡が、なぜここまでモテまくるのか詳しくは描かれないけど、なんとなく雰囲気が魅力的なのは画面越しでもわかる

なによりもやはり高峰秀子が素晴らしい
皮肉にも布団に横たわる姿の美しさは格別だった

〈 Rotten Tomatoes 🍅-% 🍿83% 〉
〈 IMDb 7.7 / Metascore - / Letterboxd 3.9 〉

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の

のの感想・評価

4.2
2時間の中にものすごい積み重なりを感じた。
昔の人はこれを観てなにを思ったんだろう。
なんか1カット1カットがすごく正しいカットである。という印象を受けた。
気取ったことをしなくても面白くできるんだな
shaw

shawの感想・評価

3.7
定まらぬ心、時の移ろい、混乱の時代。過去と現在を行き来して展開、タイトルも含め、全てが完璧にマッチして相乗効果を生み出す映画。

泣き虫女と移り気な男のだらだらした物語だとか、あるかもしれない。正直に言えば登場人物の感情移入度はそこまで高くない。

しかし名作たらしめる理由は間違い無くある。小津より抑制が効いていて、感情の機微はより際立つ。その時代の味わい深いセリフの数々が印象に残る。

良きドラマ、良き日本映画。
Kir

Kirの感想・評価

3.0

このレビューはネタバレを含みます

戦争の最中にベトナムで出会った男女の話。

男のスケコマシっぷりが見もの。一つの作品で4人と浮名を流すのは初めて見た。

そんな男でも、好きになってしまった女。

ただのすったもんだの恋愛劇なのだけど、何故か2人の行く末が気になって最後まで見入ってしまった。

時代の風に漂う2人、まさに浮雲。

日本人はこういう機微な心情を描くのが上手い。

邦画ならではの表現に舌鼓を打つ映画です。
18の時に初めて観てちんぷんかんぷんだったが26になって再見すると面白かった 幾許か分かるようになったしこういう男が実在していることも知っている 男が女の手を引いて川を渡る時に漂う死の気配がなんとも

灯りをつける/布団/並んで歩くふたり
終戦後の社会背景が色濃く残る時代に生きる男女の悲哀。高峰秀子の魅力がたまらない。雨が降り続く屋久島、どこまでも救いがない暗い展開が切な過ぎる。
愛情はあるが性に奔放な屑男と何度裏切られても想いを断ち切れない女の日陰恋愛を連綿と綴った成瀬巳喜男代表作。原作は林芙美子最晩年の長編小説で、若かりし頃の岡本喜八が助監督を務めている。

よく見るメロドラマ構造だが、徹底的に拘り抜いた映像表現と演者の仕草に支えられた男女の哀切極まる結末が戦後原風景を象徴した成瀬にしか描けない仕上がりに。
高峰秀子、岡田茉莉子、森雅之が其々に偶像的でありながらもどこか生々しい。女の執着性と男の幼稚性といった普遍的なものを最大限に誇張しつつも等身大を思わせる神業でその不思議な誘引性を担保している。
 

「花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき」
あー自分は未熟だと思う。男女の機微がわからない、2人のどちらにも共感できなかった。
戦争で全てが変わってしまった世の中に生きる2人。自堕落な男と、そういう男とわかっていながら離れられない女。人間の弱さや不条理をこれでもかと見せられる。やっと2人一緒になるという時に運命は非情だ。高峰秀子さんのワンピース姿が可憐だった。森雅之さんは下衆なのになぜかモテちゃう感じが自然すぎる(もちろん演技ですが)
nt708

nt708の感想・評価

4.4

このレビューはネタバレを含みます

流石、日本映画界の巨匠・小津安二郎が自分には撮れないと言っただけのことはある。現代では単なる浮気モノのメロドラマとして片付けられてしまうような映画がどうしてここまで気品に溢れ、壮大な物語になりうるのだろう。敗戦後という時代背景、その時代を生きた人々、彼らが作る街並み、、いずれの要素が欠けたとしても本作のような世界観は生み出すことができない。

それに限らず、映画という虚構の中に強いリアリティを感じるのは、この時代の日常の切り取り方があまりにも巧みだからに違いない。物語の運びに伴う、カメラワーク、構図、、溝口や小津のようないかにも芸術と言ったショットは観られないものの、どこか体に染み渡ってくる心地よさを感じるのが成瀬作品である。何より最後の言葉が作品に締りを与えている。

花のいのちはみじかくて
苦しきことのみ多かりき

「花」はきっと女性のことだろう。女性はいつの時代も悲劇の主人公である。これはどの土地においても例外はない。もちろんこれはあくまで映画や小説、舞台上の設定であって現実世界における女性蔑視では決してないのだが、日本で言えば源氏物語の時代(あるいはそれ以前)から、本作の言葉を借りるなら、身分に関係なく女は誰もが単なる女であった。それはこの映画におけるヒロインもまた例外ではなかったのである。

久し振りに邦画を楽しむことができた。ここまで品性高く、ユーモアにあふれた作品も稀有である。ぜひもう一度見たい。
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