浮雲の作品情報・感想・評価

「浮雲」に投稿された感想・評価

櫻

櫻の感想・評価

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ふたりは漂流の共犯者であった。どこまでも流されていく。追いかければ逃げていき、反対に避ければ駆け寄ってくる。上手く歩み寄れず、思いきりよく離れられもしない。ひとりがもうひとりを見つめればもうひとりは俯いたまま、ほぼ交わらない目線が反復する描写は、ふたりをそのまま表しているよう。どうしようもない哀切の海を溺れかけながら、増えていく愛憎をかき分け、行くあてもなく彷徨う。すぐに生だ死だと淵に立つのに、ずるずると重たい余生をやり過ごす。

ふたりの漂流の末に行き着いたのは、雨の止まぬ屋久島。病におかされていく彼女を、見つめる彼の眼差しは優しい。あれだけすれ違っていたふたりだったのに、心を通わせながら最も一緒にいられたのが、彼女の身体が自由を失った時だなんて皮肉すぎる。けれども、それも束の間、豪雨の中でひとり息をひきとってしまう彼女。彼は最後まで彼女に追いつけなかった。冷たく動かなくなった身体をランプで照らしながら、咽び泣く彼の背中が哀しく映って消えていく。
「花のいのちはみじかくて 苦しきことのみ多かりき」
龍太一

龍太一の感想・評価

4.5
たかだか色恋なんだ。そんなことより生きていくことそのものに精一杯の筈なのに、なにやってんだこの人たちは。でも、それが男と女、なんだよなあ
黙ってそっぽを向いてるときと眠ってるときにいちばん綺麗な顔してる女
戦前日本の南の果て仏印で始まった恋は、タイトルの「浮雲」の如く刻々と形を変えて流れていき、やがて戦後日本の南の果て(当時は沖縄返還されてないし)である屋久島で雨粒となり終わりを迎える。。タバコの煙や階段というモチーフの使い方、目線の引力の演出は流石に絶妙で、お決まり調子の反復は洗練されていくにつれ徐々に二人の関係の緊張は諦観を絡めて垂れていく。その過程のあからさまな匙加減は、不憫な女と不器用な男のメロドラマのマスターピースを名乗るに相応しいだろう。
結局惚れた方の負けなんでしょうか…
男がとにかくクズ!
そしてデコちゃん不憫すぎる
肉親のように見える2人の歩き。

女の顔に女の回想が重なり、
女の顔に男の回想が重なる。
Mari

Mariの感想・評価

3.8
酷い男を純粋に心の底から信じて待ってしまった女。さよならがきちんと出来ないとこんな女のようになってしまうのか。良い女でも、幸せに気づくのは、自分次第。選ぶ、決断する強さが必要だ。伊香保の町。ふらふら、ただ、漂う雲のように。戦争が終わり、どう生きるのか、特に信じるものもなく、ふわふわ、していた。呆気ない時間の中の、嘘の約束と、愛。男の我儘に振り回されるのも、程々に、だ。林芙美子さんの原作を読んでみたいな。伊香保の温泉宿で入った浮き雲の湯。温く、ゆったりと、星を見ながら、浸かりました。しかし、高峰秀子さんの顔、好きです。
kyo

kyoの感想・評価

4.5

このレビューはネタバレを含みます

初見は21歳頃だっただろうか。「暗いな」、そうおもった。「もう観ないだろうな」、おそらくそんなことさえも。当然だ。21のときのぼくの精神年齢は、それよりもさらに幼かったはず。ひっかかるわけがない。ゴダール『女と男のいる舗道』のなかのセリフを借りるなら、「20歳で愛の識別ができるか」「できないものだ」「純粋な愛を理解するには成熟が必要だ」「探求が必要だ」と、そういうことだろう。

あれから何度観返してきたことか。『浮雲』はぼくにとってまちがいなく特別な一本となった。「わかった」「わかってきた」などというつもりは毛頭ない。断ちきれぬ愛、または、愛に似たべつのなにかについて「わかった」などといおうものなら、世界中の恋人たちからこう批難されるはずだ。「わかられてたまるか」と。

ゆき子と富岡は、愛におちる。恋ではなく、愛に。だが、愛におちるとはいったいどういう意味か? 書いてはみたものの、じつのところその答えを見つけあぐねている。ただことばが降ってきただけ、というのが正直なところだ。「恋におちる」はやさしい香り。「愛におちる」はかなしいひびき。落ち葉のようなふたりはやはり「愛におちた」のではないか、と、いまはただそんなふうにおもっている。

なさけない、だらしない、みっともない。かなしい、さみしい、どうしようもない。たしかにそうかもしれない。けれど、愛や恋のまわりについた塵やほこりを吸って、咳き込みながら見つける「ほんとう」があったっていいだろう。

それでもふたりは生きている(生きてきた)。それがすべてで、ただそれだけで、意味や価値や理由なんて、そんなもの。

愛が恋に変わり、恋が別のなにかに変わり、またゆっくりと愛にもどっていく。散った花びらはどこへ行くのだろう。きっとだれも知らない。いつもすこしだけ香って、ふっと消えてしまう。
再見。貧乏くさい成瀬はマジで愛せる。靴をうつすショット、毎度ながら良い。
蹂躙

蹂躙の感想・評価

3.5
こんな二人を作ったのが戦争と思えば、なんでこんな奴好きになるんだ、と一筋縄に言えなくなる。

それにしても長い。
長いと感じるのは、二人の本質がなんも変化しないから。男は男尊女卑だし、女は嫉妬深いし。

でも、ここまで女性に寄り添った視点の映画って凄いかもしれない。
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