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エタニティ 永遠の花たちへのaknのレビュー・感想・評価

4.4
「生きるというのは死者を見送ることだ」
そう悟ったとヴァランティーヌが語ったこの言葉に全てが収束されるような気がする。
これは壮大な生命の物語。人生というのは、生まれて死んでいくこと。そしてそれは繰り返され、愛は引き継がれていく。

誰かに祝福され産声を上げた赤ん坊が、少女になり、やがて結婚し、そして子を産む。溢れんばかりの愛情を注ぎ育て、やがて子どもは大きくなり、自分の道を進む。息子は妻を迎え入れ、孫が誕生し、たっぷりの愛ですくすく育つ。
人はみな祝福され生まれて、深い愛で育てられ、やがて自分も愛を知り、その結晶を産む。人間はこのサイクルの中で生きていく。その尊さを全身で感じる110分だった。

誰もが祝福され産声を上げた赤ん坊だった。ただドラマを描こうとすると、母親は母親でしかないし、可愛い赤ん坊は赤ん坊でしかない。でも実際は、母親にも不安定な新米ママだった頃やおてんばな少女だった頃、皆んなに可愛がられる赤ちゃんだった頃が存在するんだ。当たり前ではあるけれど、忘れていたかもしれない。
この映画はダイジェスト映像のような速さで三世代に渡る家族の姿を映すことで、その素晴らしさや美しさを描き出している。

死者を見送ること、新しい命を迎え入れること、そしてやがては自分が死ぬこと。人生とは結局、その中で何を成し遂げたかとかどれだけ富を得たかとかではなく、それだけのことなのだ。生きて死ぬ、それそのものに意味があり美しい。なんだかそう思わされた。

そしてなんと言っても、映像美!
ブルジョワの家系のお話なので、服装や室内の全てが華美で麗しい。目が幸せでした。ドレス可愛すぎた〜。
お庭もとても綺麗。ラベンダーを始め様々なお花や草木が生い茂り、石畳が敷かれていて、そこにベンチが置かれていたり。天国みたいな綺麗さ。そこを駆け回る子どもたちの姿は涙が出そうになるくらい尊い。

人物も風景も本当に綺麗に撮っていて素晴らしい。トラン・アン・ユン監督が並々ならぬ美へのこだわりを持って撮影していたというのも納得。(肘の角度や、ボタンを外すスピード等すごく細かく指導があったらしい)
赤ちゃんを本当に美しく撮っていて、神々しく感じられるほど。

ものすごく清涼で神聖な気持ちにさせてくれる映画でした。生命って尊い。
何か人生の節目とか、大事な時にまた見返したい作品。
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