映画おじいさん

四季の愛欲の映画おじいさんのネタバレレビュー・内容・結末

四季の愛欲(1958年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

連れ込み宿で桂木洋子が浮気相手ともつれながら、ヤる覚悟で来たけどその前に他の女と手を切る約束してよ〜!と懇願するも、浮気相手はヤりたい気持ちが急いてテキトーな生返事ばかり…このシーンが大好き。桂木洋子が純真な分だけ一層メンドくさい感じや、その場に及んで男に判断力なんてあるわけがないのがよく伝わって苦笑いが止まらない。

安井昌二が渡辺美佐子にグイグイいく水虫シーンでは、直前に商品名をあげて水虫薬のCMも流れるけど、やはり日活映画お馴染みのタイアップ? そうだとしたら、ああやって物語に組み込んでフェティッシュなシーンを創り上げた中平康はスゴい。

登場人物が東京〜箱根〜那須・宇都宮を行ったり来たりで移動が多くちょっとだけロードムービーな風情もあって◎。
売れっ子モデルの洒落た住まい、独身男(正確には別居)の独り住まい、母娘の東京中心部の庶民の住まい、桂木洋子が嫁いだ関東田舎の商家の住まいなど色んな暮らしぶりがうかがえて面白かった。

しょっぱなから「苦労して洗濯して汚れが取れないよりも、ちょっとお金を出してクリーニング屋にキレイにしてもらった方が、かえって経済的よ」と浪費家丸出し発言をする山田五十鈴は見ているだけで元気が出てくるドラ猫みたいにたくましいキャラクター。男無しでは生きていけない風にもみえるけど、料理屋の女給長を生き甲斐を持ってこなすところからすると、実は男なんて要らないんだけど迫られたら断れないどころか即引火してしまうタイプだと思う。

狂言回しな中原早苗は程よくかしましくて、本作で初めて可愛らしいと思った。一番若くて恋愛すべきなポジションながら、唯ひとり、男の影がないのも可笑しい。

本作で初めて認識した楠侑子(性悪モデル役)が最高だった。特に落ちぶれてからが。

ホームで呆れる姉妹たちに、汽車に乗った母親・山田五十鈴は高笑い。最高なラストショット。

唯一の不満がおどろおどろしいタイトル。もう少し軽い感じには出来なかったのか。なぜ原作通り『四季の演技』ではダメだったのかな。とにかく傑作。