あるてーきゅう至上主義者

はらはらなのか。のあるてーきゅう至上主義者のレビュー・感想・評価

はらはらなのか。(2017年製作の映画)
3.6
かなり人を選ぶ映画なのは間違いない。徹底的に作り込まれた世界観にはまれば楽しめるが、それができなければ辛いかもしれない。でも一見の価値は確実にある。

主演の原菜乃華を綺麗に撮るアイドル映画、という視点から観ると完璧。撮影が非常に美しいし、なによりカフェの衣裳や美術を初めとした世界観がかなりしっかりしている。飲み物ひとつを取ってもメルヘンチック。監督が女性ということもあるのか、とにかく女性役職陣のへの演出が素晴らしい。また、ジャムなどの小道具に対しても使い方がうまい。

ストーリーは主人公、原なのかの女優としてのアイデンティティの確立と、母親の幻を追いかける心のうつろい。これは「幻を追い越して、憧れになるんだ」というキャッチフレーズが利いている。終わりかたはやや唐突だが、主人公が追い続けていた母親の幻の姿に現実で追いつき、そこからもう一歩進んで行こうとする瞬間を描き出したラストシーンだと考えると、非常に見事な終り方だ。

その一方で、男性陣の演出にはやや疑問符がついた。劇団の役者をオーバーアクト気味に演出したのはまだ理解できるが、水橋研二のカメラマンの演出は、この映画の世界観にマッチしていないと思った。

しかし、繰り返すが女優の演出が素晴らしい。主演の原菜乃華はもちろん、友人役の吉田凛音の芝居が本当に最高。これからの活躍が非常に楽しみだ。そして主人公と、そして観客への応援歌のようにも思えるエンドロール後のワンフレーズ。進級する学生や、新社会人にも、これから歩き出していくために背中を押してくれる映画として、ぜひお勧めしたい。