めばち子

ホワイト・バレットのめばち子のレビュー・感想・評価

ホワイト・バレット(2016年製作の映画)
5.0
ジョニー・トーの本作を一言で評するなら、ペキンパー『ワイルドバンチ』からジョン・ウーへと受け継がれてきた『弾丸のオペラ』の、その様式美とドラマ性の両面における最も美しい達成の一つだと言えるだろう。
クライマックスにおけるトーお得意の上下行を活かしたアクションの素晴らしさもさることながら、『戦艦ポチョムキン』を模した階段落ちのアクションの凄さとその後に明かされる驚愕のオチの落差に対抗できるのは、やはり笑/衝撃的な『下女』の階段落ちぐらいだろう。
このシーンに顕著な様に、近年のトー作品におけるアクションとストーリー展開のあり得なさは、衝撃と共に笑撃をも観る者に与えながら、同時に一切の苦情も不満も言わせない、正に『映画』ならではの美しい強引さで我々を圧倒する。
またトー作品は常に主人公が運命と言う文に翻弄されながら、それを宿命として受け入れる瞬間のカタルシスにその全てが賭けられているが、本作の原題である『三人行』の、主人公三人が運命を宿命として受け入れる瞬間を、あの一本のロープを使った上下行で描き切っているのがとんでもなく素晴らしい。
トー作品は常に新作が前作の完成度を更新し続けてきたが、本作の素晴らしさを前にすると、当分の間はいかにトーと言えども更新するのは難しいのではないか⁈そう思わずにはいられない、現時点でトーの最高傑作だ。
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