福福吉吉

スプリットの福福吉吉のレビュー・感想・評価

スプリット(2017年製作の映画)
4.0
◆あらすじ◆
女子高生のケイシーは他の2人の女子高生とともに帰宅のために車に乗ったところ、見知らぬ男性が乗り込んできて眠らされてしまう。気がつくと、ケイシーたち3人は窓のない部屋に監禁されていた。そして、誘拐した男が現れ、次々とその気配を変えていく。ケイシーは彼が多重人格者であることに気づくが...。

◆感想◆
謎の多重人格者「ケビン」(ジェームズ・マカヴォイ)と彼に誘拐された女子高生ケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)のやりとりを描いた作品であり、ケビンの存在の謎めいた部分が明らかになっていく面白さとケイシーが見せる緊迫感のあるやりとりが上手く絡み合って、複合的な面白さを演出していました。

本作のストーリーは多重人格者「ケビン」と女子高生ケイシーの2人を軸に描かれており、ケビンの存在の特異性に目を惹かれながらも、合間に挟まれるケイシーの幼き頃の記憶が謎めいていて、終盤にケビンとケイシーのやりとりに結実するようになっていて、興味の尽きないストーリー構成の巧さを感じました。

ケビンは多くの人格を持っていて最初のうちは把握しにくいですが、ストーリーが進むにつれてそれぞれの特徴が自然と分かるようになっていて、作品の面白さを増長させていきます。ケビン演じるジェームズ・マカヴォイの演技が素晴らしく、彼なくして本作は存在しなかったと思います。

一方、女子高生のケイシーは周囲と孤立しており、同じく誘拐された女子高生2人とはクラスが同じ以外、接点を持ちません。誘拐後もケイシーは冷静で明らかに異質な存在に見えました。彼女の過去が明らかになっていくうちになぜ彼女が異質なのかが分かっていき、ケビンとの邂逅が運命のように感じられて、とても素晴らしく感じました。

ストーリーが進むにつれて、ケビンの謎の人格「ビースト」の存在が話の中心になっていきます。ビーストの存在の虚実やビーストを恐れる他の人格の話など観ている側をビーストの存在に釘付けにするようになっていて巧いです。

本作ではケビンの多重人格の表現として「照明」という言葉を用いています。多くの人格たちはその証明を得たときに表に出ることになっていて、人格の間でその証明の奪い合いがあることが描かれていて、理解しやすくなっていました。

とても面白い作品でした。最後までスリリングで時間の経過を感じることなく観ることができました。

鑑賞日:2024年1月27日
鑑賞方法:DVD
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