fern

ヨーヨー・マと旅するシルクロードのfernのレビュー・感想・評価

4.5
世界的チェロ奏者であるヨーヨー.マが、2000年に音の文化遺産を世界に発信するために立ち上げたシルクロードプロジェクトのドキュメンタリー映画。

様々な政治的背景を持つミュージシャンたちの苦悩や音楽によって世界を変えたいと言う思いが熱く伝わってくる映画だった。

どのミュージシャンも、自分のアイデンティティーをもがくように探しながら、異質な文化を持つ他国のミュージシャンと共に新しい音楽を生み出していく事に努力を惜しまない。

音楽だけではなく芸術全般に言えることだけれど、それでお腹を満たすことも根本的な争いをなくすことも出来ない、

しかし、彼らは音楽の力で文化を進化させ世界を変えたい、それが自分の使命だと強く思っている、命を懸けているのだ。


この映画では、ヨーヨー.マだけではなく、イランやシリアなど紛争地域のミュージシャンも大きく取り上げていた。

争いを繰り返す自分の愛する国、そこで暮らしたいと思いながらも、そこで音楽家として生きることの難しさに自分の国を去り他国へと移り住む

でもやはり、自分の国への思いは捨てらず、再び自国へと舞い戻る、でもそこで演奏することはやはり叶わずまた異国へと旅立つ。

シリア人であるケマンチェ奏者ケイハンの、「水が飲める事、自分の愛する家族がすぐそばにいる事、そんな普通の幸せに感謝しなければならない。」

と言う言葉が重く心に響いた。

自分の生まれた国に何も思い悩むことなく住むことが出来る、この映画を観て初めてその事に感謝したのだった。


もちろん、世界的に有名なミュージシャンの演奏は素晴らしかったのだが、中国の片田舎で活動する人形劇団のミュージシャン達の心からの喜びを体中で表現する演奏には深く感動した。

ヨーヨー.マが奏でるサンサーンスの白鳥で踊る黒人のパフォーマンスも心に残った。
fern

fern