TsubasaYamamoto

ムーンライトのTsubasaYamamotoのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.9
2017.3.8 ⑧

主人公の成長が3章に渡って描かれ、どれも違う役者が演じているのだが、内気で台詞の少ない主人公に目の演技が非常に求められるからか、3人とも見た目の印象は全然違うのに目が本当に似ていて、違和感がなかったことに本当に感動した。

黒人社会で、ドラッグにいじめ、LGBT、差別や格差など多くのことが映し出されているが、銃は写り込むものの撃つシーンがなかったのは印象的。全編本当に静かに、繊細に描かれている。音楽も良く、フアンとの海のシーンは弦楽器のBGMも含め本当に美しい。

※以下若干ネタバレなので注意※

1章だけの登場で助演男優賞をかっさらったフアン役のアリの納得の存在感は、唯一の友人であり恋人であるケヴィンからブラックと呼ばれる主人公シャロンに対し、ブルーと呼ばれていたフアン、そして最後の月明かりに照らされブルーに見える幼少期のシャロン… というようになんとも最後まで残り続けるほど大きかった。
父のいない描写こそなかったが、父のような存在だったのだろうか…

女性は母とテレサしか出てこず、どちらも非常に印象的で、リアルだ。悲哀に満ちた映画だけれど、随所に救いがあって、それは主人公がもらう言葉であったり、流す静かな涙だったりするのだが、救いのように思える印象的な言葉は、フアンの昔話の老女の言葉だったり、何年かぶりに会うケヴィンのおばあちゃんの言葉だったり、テレサや母親の言葉で、出てくる女性は少なくとも、女性の存在へのリスペクトも感じた。

とにかくいろんな想いや希望が、彼らの繊細な所作に宿っていて、少しも画面から目が離せない映画だった。