NomuraMasayuki

ムーンライトのNomuraMasayukiのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.7
アカデミー賞効果でものすごく観客が入っている中で鑑賞。普通なら単館系シアターでかかるような雰囲気の小振りで素敵な作品なのだが、PLAN B(ブラピの会社)が名を連ねていたりと、規模感がすごく掴みづらい状態だ。すなわち「これは、……流行っているのか?」。
ストーリーはなんともやりきれない。口数少ない内向的な少年「リトル」ことシャロンが大人になるまでの出来事、特に彼の人生を運命づけるような大切な人との出会いを軸に進んでいく少年の成長の物語である。であるが、なんともやりきれない。貧困、ドラッグ、暴力の末に人生が狂っていく物語……ではない。かといって、強く逞しく生き抜いていく物語……ともいえない。作品の中でシャロンは彼らしい生き方を見いだしたようにも思える、だが観客が望んでいたものとは多分違う。違うように思えるのだが、それを彼に告げることも、ましてやきれい事を並べて「正そうとする」ようなことはするべきではない。
一人の人物をずっと追いかけているのに、その人物を客観的に映し続けている。映像も演出も感情を抑圧的で(とはいえ現代風のフッと息をつくようなカットもあり、絶えず息苦しい、といったほどではない)、シャロンの内面を見事に表現していた。良い作品なのだが地味、というか、人に勧めづらい。
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