あるてーきゅう至上主義者

スウィート17モンスターのあるてーきゅう至上主義者のレビュー・感想・評価

スウィート17モンスター(2016年製作の映画)
4.0
ヘイリー・スタインフェルドのファンは一食抜いてでも行くべし。最高なので。スタインフェルドのファンでなくても観るべし。観れば絶対ファンになるから。超極上ティーン映画の誕生だ!

主人公はうだつの上がらない17歳の少女ネイディーン。頭がよく、性格も悪くないのに、持ち前の消極さとピント外れの言動でどうも毎日空回り。そんな彼女を唯一理解してくれる存在だった、子供の頃からずっと一緒だった親友は、あろうことか天敵の兄と付き合い始め…という、なかなか踏んだり蹴ったりな導入部から始まる。まあ、スタインフェルド演じるネイディーンは、わがままで自分勝手で気ままな、なかなか面倒な女の子なのだが、不思議と魅力がいっぱいだ。やはりこれはスタインフェルドの演技力のたまものだろう。

この映画のファーストカットは、ネイディーンが車から降りてくるごく普通のシーンなのだが、なぜか不思議なひっかかりがあった。やがて中盤にきて、その違和感の正体がわかったとき、彼女の性格と心情を鮮やかに描いたシーンだったのだと理解したと同時に、脚本の緻密さにも驚いた。とにかく、「こんなもんだろう」という気概で作られた青春映画を半ダースまとめて吹き飛ばす力がある。

さらに特記すべきは、キャラクターの造形の深さだろう。ネイディーンの親友クリスタを演じたヘイリー・ル・リチャードソンの、親友と恋人の間で揺れ動く心情の表現は見事だし、完璧人間の兄役のブレイク ジェンナーの兄としてのプライドと優しさを見せる後半の演技はさすがだ。しかしなんといってもスタインフェルドが素晴らしい。傷つきやすい脆さと無鉄砲さと、しかし確かに存在するまっすぐさをあわせ持ったティーンを演じた姿は、スタインフェルド本人の姿とも重なって、素晴らしい輝きをみせている。

この映画の素晴らしいところは、心を開いて一歩広い世界に踏み出してほしい、というメッセージが素直に心に響くところだろう。ネイディーンのハチャメチャな行動が、結果として彼女自身も周囲も成長させていく。そしてあまりにも過保護だった母親も一歩成長して、「娘を信じる」ことができるようになったのだろう。そしてネイディーンを常に気にかけ、優しさとユーモアと、ここぞとばかりの厳しさで彼女を指導する教師役のハレルソンの名演も忘れられない。

確かに結末はベタといえばベタではあるだろう。しかしそこに至るまでの優しい物語と、なによりラストのスタインフェルドの笑顔が最高に輝いている。大人こそ観るべき青春映画の傑作だ。つくづく、スタインフェルドのファンでよかったな…。