寝て起き太郎

人生フルーツの寝て起き太郎のレビュー・感想・評価

人生フルーツ(2016年製作の映画)
5.0
この御二方にとても嫉妬した。
どう考えても自分の未来にこんな柔らかで素敵な老後生活なんてないし、90歳にもなって87歳の妻に「彼女は僕の大切なガールフレンドです」と言えるくらい誰かに愛を与え続けることなんてできないし、「(結婚するまでは親のしつけや時代のせいもあって好きに物事を話せなかったが)結婚してから好きに物事を話せるようになりました」と言わせるくらいの寛容さと包容力なんてないから。(台詞はうろ覚えなので間違っていると思います。すみません)
これがフィクションなら、こんな人なんて現実にいるわけないだろと思えるけど、残酷なことにこれはドキュメンタリー。とても美しい御二方ととても醜い自分の明暗に嫌気がさしながら鑑賞した。

宇宙の果てしなさに比べれば自分という人間一人なんてちっぽけな存在なので何かで悩むことすら馬鹿馬鹿しいとか、世界には自分より恵まれない環境で暮らしている人が沢山いて、その人達と比べれば自分の今の悩みなんてどうでもよくなるとか、マッスル思考で無理矢理悩みを消失させる手法を勧められることにほとほとうんざりしていたけど、この御二方の日々の暮らしを見ていたら、自分はなんてちっぽけなことで毎日悩んでいるのだろうと思えてしまった。

日々は積み上げていくものだと、そんな当たり前のことを人生で初めて実感できたように思わせてくれた作品。
「ときをためて」とても素敵な表現でした。