天馬トビオ

太陽の塔の天馬トビオのレビュー・感想・評価

太陽の塔(2018年製作の映画)
3.0
それは超過去なのか、超未来なのか。荒野に屹立する〈太陽の塔〉。あるいは、高層ビルを睥睨する〈太陽の塔〉――そのイメージショットが素晴らしい。おずおずと塔の表面に触れる〈縄文の少女〉の姿は、『2001年宇宙の旅』でモノリスに手を差し出すヒトザルの姿に重なる。そして始まる、〈太陽の塔〉をめぐる精神旅行(インナートリップ)。

この映画を〈太陽の塔〉製作のドキュメント映画、かつてのNHK「プロジェクトX」みたいな映画だと思って映画を観に行った人が、内容にがっかりしたという話はよく耳にする。もっともな話だと思う。先に書いたように、この映画は〈太陽の塔〉製作者の岡本太郎の芸術観、精神世界を読み解くことを第一とする映画なのだから。

それにしても、誕生から50年近くたった〈太陽の塔〉に、これほど多くの人々がその人なりの異なったイメージを持っていることには驚かされた。3.11大震災による福島第一原発事故にまで話が及ぶことに、ふくらましすぎ、うがちすぎと批判があるようだが、万博のテーマ「人類の進歩と調和」への異議申し立て、科学技術に対抗する精神世界の具現化、縄文文化に代表される原日本人像への傾斜など、一貫した岡本太郎の姿勢を考えればそれもありなのかも知れない。

延々とインタビューが続くのだけれど、誰もの発言が知的刺激に満ちていて、パフォーマンスの映像と相まって2時間があっという間。狂言回しの〈縄文の少女〉も魅力的。

万博で訪れて以来、何度も足を運んだ〈太陽の塔〉は今年、閉鎖されていた内部が再整備され公開された。映画を観て、また訪れてみたくなった。
天馬トビオ

天馬トビオ