とらお

汚れたミルク/あるセールスマンの告発のとらおのレビュー・感想・評価

3.5
1990年代にスイスに本社を構えるグローバル企業ラスタ(仮名)のパキスタンにおけるトップセールスマンとして活躍していたアヤンは、知人の医師を通して、自身が精力的に売り込みしていた粉ミルクが原因で貧困層の乳児が死亡している事実を知ってしまう。会社を辞め、その事実を告発しようとした彼の前には次々と困難な壁が立ちはだかる…。

実話を基にしており、問題はおそらく今でも解決していない。アヤンも正義感と人間的弱さを併せ持つ普通の人で、決してヒーローではない。悪の凡庸さ、フィデューシャリー デューティ、色々なことが頭をよぎり、もやもやする。パキスタンではグローバル企業と権力者が癒着しており、訴訟リスクが絡むと先進国のメディアは尻込みする。グローバル企業を敵に回すことの難しさ、個人の無力さを痛感する作品。先進国で初めて公開されたのがネスレの粉ミルクを展開していない日本だという事実、2014年の作品が日本で公開されるまで3年もかかっているという事実。闇が深い。
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