菩薩

苦い銭の菩薩のレビュー・感想・評価

苦い銭(2016年製作の映画)
3.9
働けど働けど猶わが生活楽にならざり、咳をしても一人ぢっと手を見てなどいると、人としての形、その輪郭は段々と朧げになり、もはや物に成り下がったなどと実感する事が良くある。物であるからそこに感情は無く、未来も無く、希望も可能性も無く、壊れたところで代わりなどいくらでも存在する。そうして汗水垂らして溜め込む物を溜め込んで苦い銭を稼ぐ傍で、享楽と贅沢に溺れながら甘い蜜を吸う輩がおり、今日も削りに削られた「人権」費が誰かの懐を温めている。それがグローバル経済の正体であると言う以前に、人間社会の真実であろう。少なすぎる0は人を腐らせ尖らせ鬼へと変える、多すぎる0もまた強欲の嵐に晒し更なる搾取の目論見へ人を走らせ鬼へと変える、人が人の形を保ち続けるのは困難であり、兎角この世は生き辛い。たかだかちっぽけな紙切れ一枚に踊らされる人間の姿、だがそんな紙切れが、また目には見えない通貨が、結局はこの社会を牛耳り回しているのである。金は天下の回り物、そして回し者、回されているのは猿、では無く人である。
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