解

ゲット・アウトの解のレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
3.9
 第90回アカデミー作品賞ノミネート作品、ダンケルクに続き鑑賞2作目。

 NetflixのCMで気になっていた程度の予備知識で鑑賞。

 愛煙家の黒人男性写真家クリスは白人の彼女であるローズと共に彼女の実家に向かう。序盤に彼女の母親が紹介されたときから、「え?」っと思うところがちょっとづつあった。庭で家族と談話するシーンで「催眠術でキッパリ禁煙できるし、したほうが良い」とクリスに詰め寄るところで、「もしかしてこれホラー映画なのか?」と勘付いた。

 少ない登場人物によるミステリー・ホラーといったところか。90年代によく生産された低予算のホラー映画のようだが、「どっちだ?」的な岐路を選択するようなよくあるシチュエーションはあまりなく、これまでとは別のタイプの新しい語り口で物語が展開する。

 ホラーであるにも関わらず、黒人の人種差別をメッセージとして高く掲げた映画でもある。脚本・監督であるジョーダン・ピールという人物は本編を観るまで知らなかった。経歴を調べてみると本編が初監督作品であり、やはり黒人である。先に述べた2つのポイントがみごとに腑に落ちた。

 また、製作費は500万ドルだったらしい。わかりやすく1ドル110円と仮定して円換算すると、5億5千万円。日本国内の映画の予算としても少ないほうだろう。あと、本編でCanonのデジイチが持道具として登場する。他の作品でもよく見かけるが、この手のホラー映画ではCanonが愛されてるのかな?

 これらを踏まえての総評としての感想は、「とても良くできていた」という事。若干先が読める部分もあるが、特記すべきはクリス役を演じたダニエル・カルーヤの名演技だろう。当然、アカデミー主演男優賞にもノミネートされている。何が良いか?顔芸でしょう(笑)。とにかくエモくてヤバい!これは本編を見て確認する他に説明できる術はない域に達していると感じた。
 また、適度な緊張感と興味を持ち続けて、飽きることなく伏線をはりながら進行するよう構成された脚本も素晴らしかった。ただ、クライマックスの脳外科手術や暴力描写については、正直やりすぎで引く部分が多かった。また、ラストを含めてこの演出が作品の強いメッセージとなるのだろう。ただ残念ながら、日本に住む一般的な日本人としては、アフロ・アメリカンの潜在的な人種差別の実態と当事者の感情について、知ることは出来ても理解までには至れない。

 とはいえ今後のジョーダン・ピールの動きに注目したい。
解