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オリーブの樹は呼んでいるのchiakihayashiのレビュー・感想・評価

オリーブの樹は呼んでいる(2016年製作の映画)
4.0
こんなふうにパンキッシュなヒロインが、それも社会的に大きな問題背景を踏まえて、生き生きと造型されたことが画期的だと思う。

アルマは20歳。代々続いたオリーブ園は、グローバルな金融経済に翻弄され−−−−オリーブの価格は原油のように変動するのだそうだ−−−−、バブルに浮かれた父の無惨な失敗もあって、ひよこをあたかも器械のように育てるキツくて汚い労働−−−−そうはいっても鶏は生き物なのだ−−−−に従事する日々。が、樹齢2000年、つまりはローマ時代に植林されたオリーブの樹が切り倒されて売られて以来、めっきり老け込んで口もきかなくなった大好きな祖父を見ていられず、あの樹を取り戻すという突拍子もないアイデアに取り憑かれて行動を起こす。

アルマはヤケになって馬鹿な振る舞いもしてしまうけれど、おじいちゃんの笑顔を見たいという思いが発火点になると猪突猛進、そのヤケクソなエネルギーはあれよあれよと周囲を巻き込んで、一大冒険旅行が始まる・・・・・・。

ドイツの企業が〝環境にやさしい会社〟とアピールするためにオリーブの樹を購入したこととか、現地の若者たちがSNSを駆使してアルマをサポートすることとか、皮肉も効いていれば、希望の芽を育てようとの志も見える脚本。しかもメデタシメデタシにならなかったのは、監督と脚本家の12、3歳の娘がそんな結末は「ありきたりすぎるよ」と言ったから、というのがスバラシイ!(イマドキの子はなんとオトナで賢いんだろう)

アルマに扮した女優さんは映画初主演にしてゴヤ賞新人女優賞。
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