あずき最中

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?のあずき最中のレビュー・感想・評価

3.8
岩井俊二監督版(実写)を観た上で観賞することをオススメ。
「君の名は。」と比べる人もいるけれど、個人的には、それは安直すぎる、比較には適していないと思うので、「君の名は。に比べて~」という見方はナンセンスな気がする。

【実写版と大きく違う点】

①典道くんがなずなちゃんが引っ越してしまうことを理解し、自分の意志でループを繰り返す
(実写では、なずなちゃんが引っ越すことを本当の意味では理解していない。1度しかループ(ifルート)は起こらず「また2学期に会おうね」という言葉が果たされない切なさが余韻として残るがそれは弱まる)

②典道、なずな、祐介の心情が明確に
(なずなはどうしてかけおちをいきなりやめてしまうのか、祐介の「あんなブス(なずな)なんか好きになるかよ!」の真意が明確になる)

③ループが繰り返されるので、結末部の演出が改変されている
(②を受けて、直接的に感情を表すシーンが増えた)

【気になったところ】

・小学生→中学生への変更
声優の都合もあるかもしれないが、小学生ならではの良さが多少失われた。
女子の方が心身が大人びている(第二次性徴前の)感じ、男子が恋愛に奥手(笑いに昇華してしまい)がちなところとか。
ヒロイン背ェでっか!すれてる!と思うなかれ、男子がまだ育ってないんだという。

・キャラデザ
アニメだから仕方ないとは思いつつも、みんな割りと美形である。なずなちゃんの美人度が比較しがたい。
とくに祐介くんはモテそう。なずなに嫌われているのはなぜなのか?
(なずなちゃん、怪我をしていない典道くんに水泳で大敗していたから、運動神経が良くないとか...?)

・「16歳に見える?」のなずな
やっぱり、岩井版の三つ編み→ほどく!大人っぽい!みたいなのがほしかったな。見知った人のいつもと違う髪型ってだれしもドキドキするはず。

・結末(ラスト30分くらい~)、中学生ということもあってか、少し露骨な表現が続き、びっくりする。泳ぐだけで通じあえていたはずだと思われてならない。

・なずな(ペンペン草)の原っぱ
夏にあんなに咲くっけ...?
登校日が~みたいな話をしているあたり、夏休みと思われるが。

【良かったところ】
・ドラマ版へのリスペクトがある。
名シーン、名(迷)台詞を引き継ぎ。ループの仕組み以外、中盤までは原作に乗っ取りつつ、アニメならではの美しい表現が続く。プールでのやりとり、各花火の表現は見もの(シャフト的な表現は多少鼻につくが我慢)。

・岩井版を見て「この登場人物はこう思ってこんな行動をとったんだろうな」という仮説を立てていた人にとっては、ひとつの解答となる。
特に男性社会の「俺たちよりも女とるのかよ!!」感がじわっと描かれてるのが生々しい。

・岩井版では「if」について説明がなかったが、今回は意識的にループするので、いきなり場面が飛んでも納得がいく。
(なんであの物質でループするんだ!とかいう人は夢がないと思う。)

・声優の演技について
正直、予告を観たときは、これはまずいと思ったし、観る気がなくなった。

ただ、岩井版を見てみると、意外と小学生ぐらいの子どもたちは尖ったり平坦な声(いわゆる棒読み)をしていると感じたので、それを踏まえると、岩井版に寄せたのかも?と思えなくもない。

菅田くんの粗削りな声も、すずちゃんと小悪魔っぽい声も良かった。

特に、なずなちゃんは他の子どもたちよりは大人っぽい反面、年相応に無邪気な部分もある、複雑なキャラだが、良く演じられていたのでは。「瑠璃色の地球」の歌声も○。

宮野さんは安定していたのだけど、「50m競争しようぜー!」や舌打ちなどで某水泳アニメが頭に浮かび...。しかし、岩井版でなかった勇介くんの人柄が見えたので良かった。

・かけおちシーン
半分面白がって観てしまったのでどうなのかとは思うが、ここまで追うか!と楽しめた。エンタメ。

【観賞後の感想】
「どうせだめだとしても今日だけはいっしょにいたい」
道理は分かっていて、その行動が無駄になってしまうとしても成し遂げたい、と思えることが若さなのかもしれないと感じた。
子どもならではの無力さを自覚しつつ、現実をどう打開するか奮闘する姿は、中高生よりも成人に響くのではないだろうか。
二人が再会できても、できなくても、一夏のかけおちはずっと心に残るはずだと思う。
あずき最中

あずき最中