田畑ヒロアキ

カーゴの田畑ヒロアキのレビュー・感想・評価

カーゴ(2017年製作の映画)
5.0
2018年のベストゾンビ映画に決定です!今年はもうこれ以上のゾンビ映画は生まれません!

主人公の家族やその他登場人物にゲーム『ラスト・オブ・アス』っぽさを感じた。でも主役のジョエルとエリーじゃなくて、彼らが旅の道中に見かけては素通りする数多の死体たちの物語。
主役になれない普通の人々の最期を見届ける。

48時間かけて吐き気や痙攣を伴いながらジワジワと進行するウィルスを"厄介な病気"として描いており、末期になるにつれ確実に死を悟らせていく。
これまでのゾンビ映画だと省かれがちだった、人間からゾンビに変異していく様子を克明に描いた点が素晴らしい。感染者は決して楽な死に方をしない。故に娘を安住の地へ送り届けるミッションは常に絶望がつき纏う。

挫けそうになる弱い心をグッと抑えて娘のために強くあろうとする父の姿に俺の共感メーターが爆発。弱さこそが人間の本質なのだと言わんばかりにマーティンの演技が更に映画に深みを持たせていく。
奥さんが死に自分も数時間で死ぬ。ゾンビだらけの世界で娘を救うなんてハードル高すぎるが、娘の存在が希望を生み父を生かし続ける。
そしてあの結末…オリジナル短編とは少々違うがこちらも素晴らしい。愛に満ちてるとか、そんな陳腐な言葉じゃ言い表せないような、家族愛よりももっと壮大で優しさに包まれたもので、人類のDNAに刻み込まれた美しい部分を目撃した気がする。

それとゾンビのデザイン!これがまた良いんすよ!ガクブル歩行に加えて片栗粉が混ざったような体液が汚くて最高!半径5m以内に進入するのをご遠慮したくなるレベルだ!また、ゾンビがただの捕食者じゃなく、謎の習性を持った生物として活動してる設定に5億点あげたい!

映像もかっけえ!シルエットを多用したトンネルの場面が特に好き!ヒッチコックが言うように影と光のコントラストが映像を美しくする!

よくぞあの傑作短編を発展させて長編化に成功しましたな!お見事!監督のお二方の今後の活躍がますます楽しみです。