映画おじいさん

雪が降る前にの映画おじいさんのレビュー・感想・評価

雪が降る前に(2013年製作の映画)
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ラップでぐるぐる巻きにされる青年。まるで「良い映画はファーストショットから素晴らしい」の見本のような始まり。タンクローリーのコールタール(?)に潜む主人公に一体どんな映画なんだ?とも。

駆け落ちで欧州に逃げた姉を殺すため(=名誉殺人)の旅に出た弟のロードムービー。
姉を追いかける道中で初めて恋をして、正しいと信じていた名誉殺人に疑問を持つというか信念を持てなくなってしまう…物語としてはひねりもなくストレートだけど、ひとつひとつのエピソードをしっかり力強く描いていて全く飽きない。
ド近眼のホテルの少年、怪しい密航業者との取引、トルコ〜ギリシャでのハラハラする密入国など娯楽要素が随所にあるのも素晴らしい。

単なるストリートチレドレンとしての登場かと思わせたヒロインが主人公以上に素晴らしい。というか最高!
性別さえ分からない薄汚いネズミのような登場から、不安に満ちた目で主人公を雪のプラットホームで待つ姿はもはや別人。その過程もキチンと描かれている。父親に歓迎されない娘とか…涙。彼女を観れただけでも満足なくらいに魅力的な女優さん。

やたら地元が一緒とか、地縁による繋がりが出てくるけど、そういうのが強い土地だからこそ名誉殺人みたいな悪習が残るんだろうなとも。

とても素晴らしい作品だったけど、ひとことだけ言うなら、皆んな気になったであろう、主人公の相当へんな走り方。おまけに走るシーンが多いから、どうしても気になる。わざとかなと思わせるほどだけど、わざとだったら何が狙いなのかな?