寄り道わき道

クローゼット・ランドの寄り道わき道のネタバレレビュー・内容・結末

クローゼット・ランド(1991年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

久しぶりに再視聴しました🔥
やっぱりとても面白くて自分の好みの作品です。好きな映画ランキング割とトップに入りそう!舞台のような感じなので、すごく集中して見れる作品でした。でもとても難解だから、もっと色々考えて理解を深めたいですね〜😵第一言語でこの作品を見れないことも悔やまれる〜(日本語版を見まして理解度深まりました。自分の翻訳具合は間違ってなかったですが英語版よりも色々と考えやすかったです。再度考えた事など※括弧で付け加えます)(私なりの解釈が入りますのでお気をつけてください)

とにかくアランの多面的で豊かな演技力に脱帽で…一人三役でのシーン(声は恐らく変えているが)や他の全場面においても、声色や声の強弱、アクセント、表情や仕草など全ての要素が繊細に細部まで意識されて表現されていることがわかります。相手役のマデリーン・ストウ(Madeleine Stowe)の演技もなかなか見事で圧巻です。
作中では効果的にイラストや写真を使って表現していて演出もとても良いです。舞台美術はドラキュラでアカデミー賞を取った石岡瑛子さん。スタイリッシュなデザインで尋問の際に使われてる三角のテーブルなど美しい。テレビで見るとより効果的に見れたので、映画館だともっと飲み込まれるような迫力があったのだと思います。音楽もとても良い。

子供向けの本を書いていたのに急に捕えられて、潜在意識の洗脳?教化?("subliminal indoctrination")って言われてもね、理不尽ですよね。言論の自由がない世界の恐ろしさを感じましたし、もちろんそれが保証されていてもありうる話だな〜っと。それがこの話の根幹でもあるんだろうな。あとは「見えてない気づかない。全てが大丈夫のようなふりをして、そして人々は子供のようになる。それが恐ろしい。子供は無力だから」っていう最後10分辺りの彼女の言葉と最後のガンジーの言葉がこの映画の根幹かな。

政府側の絵本の解釈としては彼女の過去からして→子供は犠牲者、母は独裁者を意味しているらしい。この政府は芸術家などを特に警戒している様子で、特にビスマルク?の言葉にあるように子供への洗脳を恐れている。

ヒロインは夜中に捕まりクローゼットのようなところに閉じ込められていて、つまり尋問の初めから(最初のシーンの「クローゼットのようなところに閉じ込められたという台詞」でも)クローゼットランドという絵本との繋がりがある。後々クローゼットランドとは?という尋問になるが、最初からそれがこの逮捕(または尋問)の目的だったことが見ていて理解できる。(最初の尋問中の、尋問官さんのあやふやな言い回しで混乱するかもしれないが)

初めの方に尋問官さんがヒロインに言う台詞で「君は権力を憎み、少女に共感している」「今も孤独な大人だな、世の中を傍観している。傍観して、期待している。」というものある。ある意味この傍観しているという意見は当たっているように思う。最後の方のシーンに、今まで他のジャーナリストの人がいなくなったのに見ないふりをしていたということをこのヒロインは話していて、気づかないようにする恐ろしさ(上記で述べている子供のようになるってやつ)を自分でも行っていたことに気づく。

ちょっと自分の個人的視点ですが…↓
途中、主人公が「why don't you question me?? I don't want this other man.」って言ってくるところ割と尋問官さんに絆されてる感じがしていい。とても私の性癖です😮‍💨笑 誘導上手なことで…しかしまぁストックホルム症候群的な部分も若干あるのかしら…?海外のレビューでもそうなのかな?って言ってる人いましたけど、はてさて。
(その後途中、ヒロインの人が尋問官さんに縋るような感じの表情をしていて、一度のみ込まれそうになるんですけど、やっぱりダメ!って感じでリセットされた表情になる所がよかったです。尋問官や雄鶏が同一人物と気づいたのかな?と思いましたがやっぱり気づいてなさそうかも)

「眠れば死」って台詞も、寝て終えば洗脳されるってことを本人(ヒロイン)が理解しているっていうのがわかってよかったです。

あと声変えてる尋問官の人が2回目出てくる時の急な下からのアングルでアランの顔アップで(視聴者はここで同一人物と気づく)ドキッとする。効果的な演出で良かったです。

あと尋問官さん、Elizabeth Barrett Browningのsonnetを引用してたり教養のある人間で(そりゃ学者だから)、洗練されててスッキです!素敵すぎる。

ってことは置いといて

あと、実際彼がめちゃくちゃに壊されてコントロールされていたのか、それともそれさえも演技だったのか、そこがちょっと結論付けれないです…
(※と以前書きましたが再度見直してみて、やっぱり彼は元学者で彼女と同じように捕まってコントロールされていたのだと思います。サインが"些細なこと"じゃないか!っと言う台詞もありますし(そう思わせれてる?かもしくは実体験から来る半ば諦め?のような台詞)、ヒロインに「これが仕事だなんて疑問を持たない?」っと聞かれた時にぼんやり記憶を探るような…以前の様子を示唆するシーンがあります。あと、「学者が注射一本でこのザマだ!悩みもなく考える事もない、頭は空っぽさ」「どのみちデタラメさ、サインしろ!何を構う、どうせウソだぞ」っと言うシーンがあり、あのシーンはそれすらも演技していたとは思えません。そう思うと途中にあった「私も監視されている」という台詞も本当にそうされているように思えます。)

(※また「我という仮面の幾年雨に打たれ、白くはだける仮面の裏の我が魂こそ、我が真実の顔…。もう昔のような」というsonnetを引用した台詞があります。私が思うに仮面は尋問官としての顔、真実の顔は元々の…ってこと。そしてもう昔のような…ってことは元々のは忘れかけている?ってことかなっと。それを彼女に気づいてほしかったのかな?とも思いました。)

ちなみに彼が本当にあの男だったのか問題については、私は違うと思いますね。(※ここは意見は変わりません。あの虐待の男とは年齢も違うので)

〜最後どうなったかについて〜
尋問官さんはサインをしろと言った時心配してるような様子で、断った時はぐったり項垂れている。そして諦めたようにどこかに案内する。やはり死に向かうのか?彼女にとっては死は救いなのか?(※詳しくは描かれてないが、やはり死に向かうのかなと個人的には推測)(※台詞で最後のチャンスだと言ったとしても?というのがあったので、最後ということはやはり…)


【※何を母親は気づかなかったのか"気づく"とは??

クローゼットランド(closet land)とは何か苦しいことを乗り越える方法または場所で、劇中の台詞でも「(私は?)クローゼットランドへ逃げられた=逃げることができた」そこはどこ?という質問に対して「私の心の中」、その後「体は壊せても心は壊せない」とある。

vhsの裏には、恐怖と苦痛の中で、女は自分がいままで気づいてなかった希望や意識を発見する、と書かれていた。

つまり総合して考えると、あの絵本は彼女の幼少期の虐待によるトラウマに対する現実逃避を元に書かれており、また成長後でもそのトラウマに対処する一つの方法として(ある意味、無意識的に)存在しているんだと思います。彼女にとってはあれは過去の出来事ではなく、ずっと再体験が起こっている現在進行形なこと。その逃避行動でもあり、無意識的な自己の再認識のためでもあります。つまり虐待のPTSDやトラウマに無意識的に向き合うための手段として、あの絵本が生まれてたのだと思います。気持ちに向き合い過去と折り合いを付け、昇華するための…。

でも確かにcloset landって【子供向け】の絵本にしてはちょっと"意味深"ですよね。子供がクローゼットに閉じ込められるってシチュエーションが子供向けの本にあるのな??まあ、ハリポタも閉じ込められてたけど重いですよね…うーむ🤔
でも途中の台詞で「もしやられても何か他のことを考えろ。考えて楽しくなることを」と言われて、彼女は今までの絵本に出てきたキャラクターを思い浮かべるんですが、他の苦しい状況にいる子供に対してこーいうこと(乗り越えるために楽しいことを考えろってこと)を伝えたかったのかな?と考えたりもしました。

途中のシーンでタバコに過剰に恐れているような反応があったのですが、これもトラウマかもしれません。例えばあの男が昔吸っていて、暴行に使ったなど。】

そもそも内容も難解だし、英語版だと単語もちょっと難しいところあったりするし、英語苦手な人やこーいう重たい内容がしんどい人にはたぶん見るのちょっときつい作品かもしれない…でも諦めず最後まで見てほしいです…!!好みや評価がすごく分かれる映画だろうけど、自分的には凄くよかったです!

この素晴らしい脚本、そしてそれを見事に演じきったマデリーンとアラン、そして演出、舞台美術からこの映画に関わった全ての方に敬意を!最高でした!!

ps.ちなみになんですけど、あのヒロインが吐き出したワインボトルの中身は何なんですかね??まじで小◯なんですか?!(回想シーンのやつ的に…)まさかそんなことはないと思ってたりもするんですが…わかる方いたらぜひ教えてください。
吐き出すぐらいのもので、「痛めつけるときには教えてくれるって言ってたのに!」みたいな台詞があったから、刺激物かもしくは何か嫌なものであることは間違いないんだけども…うーん

この作品は日本語版はvhsのみ、配信はなし