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ワイルドライフのajaのレビュー・感想・評価

ワイルドライフ(2018年製作の映画)
3.6
「僕は二人から、人生の全てを学んだ」
鑑賞後に見たポスターでこのコピーを目にして鳥肌が立った。

父親の失業をきっかけに家族が壊れていく様を通じて、大人の人としての弱さ、不完全さを描きつつ、それでも全てを受け入れて家族であろうとする強い息子の物語…。

仕事をクビになってしまい、自分の短所と向き合えず、妻が働きはじめて自分が惨めになり、突然山火事の消火隊へと現実逃避してしまう父親。

夫から見捨てられたと感じ、女としての焦り、寂しさから他の男と関係を持ってしまう母。

そんな壊れゆく家族を静かに見つめ、ダメな大人たちのよき理解者、話し相手となり、家族を繋ごうとする14歳の息子。
息子が一番大人だと感じた。

家族の映画であることは確かだが、個人的には夫が山に行ってしまった後の母の心情はかなり丁寧に描かれていたと感じる。
「はやく目覚めさせたい…でも、一体何から?」
幸せな家庭を築きたいと思っていたのに、夫に捨てられ、山に囲まれた寂しい土地で、誰から愛されることもなく、ただ生きていくだけ…?
そんな不安や寂しさは想像するだけで辛い。

病めるときも健やかなるときも、相手を敬い、愛すると誓って一緒になったはずの二人。
だけど、誰もが互いをいつでも完全無欠な愛で包み、信じ、理解することが出来るわけではない。
惨めな心、プライド、愛されていないと埋められない欲求、たしかにこの映画には人生の全て、人の弱さが詰まっていた。
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