Angiii

羅生門のAngiiiのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
5.0
構成で様々な角度から魅せる人間の心内に秘めたる見栄や卑しさ妬み自己憐憫、そして信/不信の揺らぎ。多襄丸、真砂、武士の心象が狐につままれるように刻々変化することから、鑑賞者はその奇妙な寓話の1つの視点として巻き込まれざるを得ないのである。

1950当時のものとは思えないような浮雲や流水のみずみずしさ、多襄丸の目に光る粗暴かつ野性的な光、真砂の目に光る木漏れ日とそよ風は映画館内に座っている私の肌にも届いた。三船敏郎、京マチ子、森雅之や志村喬、各々の表情の変化があまりにも生々しすぎて、同じ数の眉と目を持っているはずだが私にはそのような感情表現は到底できまいと今でも感じる。

自己のためには鬼をも欺くような欺瞞の変幻、人間の妖に勝る本性の危うさの象徴として今にも朽ち果てんとする羅生門はただ静かにその視線を投げかけるのである。
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