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羅生門のAsroのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
3.5
枠で覆われた箱庭の世界を見ているようだった。つまりこの映画はとても説教的で、人間のある能力について語るために用意された<箱>日本昔話の一つのように感じた。まあ実際昔話なんだけど。

それはこの映画は基本、登場人物の1人がある過去を振り返ってそれについて話しているのがベースだから、そこの<枠>がまずある。
で更に外は豪雨で門の下で雨宿りしているという枠。

でBGMの枠。
激しい豪雨の現実の場面と過去の話に切り替わった時の仰々しいBGM。
それがこの物語全体を包み込む枠として機能している。

で、シーンの場所が三箇所しか出てこない。
門の下→役人の前→山の中→門の下というループ構造だ。
つまり流れが断片的なものの組み合わせとなっている。

だからか現実的な映画とは思えず何かこの登場人物たちの外部に神のような存在がいて登場人物たちを良いように操作して遊んでいるかのようなそんな印象を受けた。

みんながみんな自分自身の役割をロールプレイングしているようだった。それは役者の演技が下手とかいう意味ではなく、何か超越的な何かに操られてる、人間というものがより人間的である為に、を僕たち視聴者に教えてくれるために。

その僕たちに教え込むためのその箱庭的圧力が凄まじかった。登場人物たちみんな狂気じみていて人間の闇の部分でみんな活動しているような感じだった。
圧倒的モノクロ豪雨日本昔ばなし、です。

で、僕はその箱庭感があまり受け付けられなかった。なんか、語るための映画というか、人形遊びというか。でもだからこそ人形的な造形の京マチ子は輝いてたし、三船敏郎の突然スイッチが入るアル中のような演技もより際立って人を惹きつけたのだと思う。

p.s.京マチ子の演技が良かった。
全体的に真実味が感じられた。で特に良かったシーンが三船敏郎にうっとりとした表情をするってとこなんだけど、本当に骨抜きにされたような顔してたんだよね。
あのとろけた顔の純真さはとても目に焼き付いた。
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