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羅生門のASKのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
3.8
芥川龍之介の「羅生門」に「藪の中」を足して、さらにスパイスを加えた作品。

1つの事件に対して、数名が証言をするが、そのどれもが異なっており、真実はなんと・・・というお話。事件の謎解きではなく、人間の性を描いた作品だと思う。

人間は誰しも、どうしても自分が可愛いもので、自分に都合の悪いことは隠してしまう。人の死や、自分の死を傍にしてなお、その性が出てしまうところに、人間の末恐ろしさを感じる。そして、それは普段どんなに良い人に思える人でも持っているものだ。登場人物で唯一、穏やかで清らかな人物であるお坊さんでも、一瞬、それが垣間見えるところが面白い。

ただ、そんな人間を肯定してくれるようなラストで、なんだか清々しい気分になった。それが人間だし、たまにはそういうことはあって良い。と、受け入れてもらった感じだ。全体的に少し冗長な感じは受けたが、考え深い映画だった。

この映画を機に、芥川龍之介の小説を読んだが、こちらもまた面白い。知らない単語だらけで、何度も調べながら読んだが、短い言葉で情景が浮かぶ見事な語り口で、こちらも未読の方はオススメです。
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