藍青

羅生門の藍青のレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
3.0
心の深淵を見る。そんな映画。

たとえば惑星ソラリスなどの、精神世界が物体として現前化するタイプの映画とは様相は異なっているが、
同じように主観や精神世界の深みに触れさせてくれる作品になっていると思う。

ただ、ただ精神世界を旅する映画ではなく、
現実との接点を最初や最後に持たせてくるところが黒澤らしいか、と感じる。
ラストの赤ん坊を見受けするシーン、
ここがあるから本作に対して、
監督は何かテーマ性をもたせたかったのだろうと思われる。
途中の妻の回想シーンにある”男なら一心不乱に戦え””それができないなんて失望した”という挑発も
”あなたを信じたかったのに信じられなかった”という、信頼と不信というテーマが流れているのだろう。

本作は、”それでも人を信じられるか”という一点を中心として広がる、
だだっ広い草原だ。
それが古い映画なので、現代からすると時代劇の色がついたものとして、
同じ日本なのだが一種の異世界情緒すら感じさせる風貌で新たに立ち現れている。

黒澤映画らしい単純さで描く心の深淵、とても興味深かった。
藍青

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