金宮さん

彼女がその名を知らない鳥たちの金宮さんのレビュー・感想・評価

3.5
ミステリー要素は中盤あたりで大体の決着がつく。それ以降は争点を、陣治の言動が「無償の愛」なのか「孤独を恐れた打算」なのかどっちだ?として観てみた。

衝撃的なラスト。そっか別に二項対立にしなくてもよいんだった、と気づく。最初は見た目に対しての一目惚れであっても、継続する動機に打算があっても、徹底的に寄り添えばそれは相手にとっての無償の愛となり胸を撃つ。さすがに陣治は行くとこまで行きすぎてるが、そうするべき相手にはそうしたい。

シンプルだけどとても大事なことなので、こういった作品を定期的に摂取して思い出すことって大事だなと思う。そういう意味では、意外にもドラマ『奇跡の人』とかと同じジャンル。

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と言いつつ、大傑作!と手放せられないのは脚本の、主に台詞まわしがポンコツすぎたから。

"あんたは男やない。どじょうや!どじょうの陣治や!"
"僕たちはお互いのこと知らないよね。
(中略)タクラマカン砂漠は永遠の死なんだ"

この辺は、何かを読んでるだろっていうくらい饒舌でリアリティがない。前者は十和子のクレーマーっぷりを、後者は水島の軽薄さ(出典元の本もあってほんと読んでるだけぽかったし)を表してるとも見れるけど、ラスト近辺でも「コナンか金田一くらい丁寧に種明かす陣治」「観客に優しすぎる走馬灯演出」あたりで再び顔を出してきて、あーせっかくぞくぞくきてたのに邪魔くさい!ってなった。

「素晴らしい原作&監督の一流演出&最高のキャスト」VS「説明過多脚本」で前者がかろうじて勝った感じ。

「生命保険ってなーに?→好きという証よ」のノータイム発言や、通風の陣治に豚足食わせたりで姉のサイコっぷりをしれっと匂わせる。オープンスペースでの書類紛失電話で水島のダメっぷりを示す。生命保険の件はとても重要だけどさらっとしかも自然に一度登場するだけ。などなどキラリと光る部分もたくさんあり、白石演出と連ドラ風味の脚本がせめぎ合っている様を邪推した。
金宮さん

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