Tanuki

孤独なふりした世界でのTanukiのレビュー・感想・評価

孤独なふりした世界で(2018年製作の映画)
4.1
たった一人生き残った男が、自分なりの生活スタイルを築き上げて生きる姿を追うのが楽しい。でも、寂しい。この世界になる前から、彼は同じように一人で生きてきたことが想像できるから。一人で生きれば傷つかない。でも、ずっと一人ではいられない。

死んだ町の住人たちの家を片付け、遺体を埋葬する主人公の行動に、ピーター・ディンクレイジの風貌が切実さを色づける。きっととても大変な作業だが、彼はそうするしかない。死んだ人たちのためというよりは、自分のために。

人を遠ざけ孤独に生きる人間は、一人を愛しながらも他者を欲する。自己矛盾に苦しみ、傷つくことを恐れやはり一人を選択する。でも

"人生は他者である"

他者に映してこそ自らの幸せを自覚できる。そんな映画だった。「永い言い訳」を思い出した。

ピーター・ディンクレイジ、ほんとに素晴らしかった。

大規模な災害で多くの人が死んだあと、残された人たちはどんな風に気持ちをケアして生きていくべきなのか、ということも考えさせられましたね。主人公が毎日コツコツと進めている作業は、生きるためでもあり自分の心をケアするためでもある。

映画、音楽、本、花、ていねいな食事。人間らしい暮らしの中で、他者だけが足りない。
Tanuki

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