フィルモワ

PEACE BED アメリカVSジョン・レノンのフィルモワのレビュー・感想・評価

3.5
ジョン・レノン。世界中のひとが知る、その名前。そして彼のメロディ。私にとっても彼の面だちやその曲は、幼い頃から親しみ深いものでした。だけど本当は全然知らなかった。平和を願う彼の活動が、常に闘いを強いられてきたことを…。

ビートルズ人気が異常に高まるにつれ、ジョンのパートナーであり、彼の表現に大きな影響を及ぼしたオノ・ヨーコへの批判や風当たりも強くなります。本作では、そんなイギリスでの活動に限界を感じた二人が、比較的リベラルな気風を持つNYへ移住した後の、いわば「アメリカ時代」が描かれています。

しかしこの自由の国にも、若者に絶大な影響力を持つ彼らは脅威と映ったようです。平和運動を通じて、反政府組織の人物とも交流を持ったジョンは、ニクソン政権下の国家機関から執拗な圧力をかけられ、必ずしも存分にその表現欲求を満たせたとは言えそうもありません。

彼の主張そのものは、実にシンプルなものでした。その単純明快な「なんで?」は、ほとんど子供みたいでさえある。そしてそうした根源的な反問こそ、大人を口ごもらせ、まごつかせる何よりのもの。簡単に見えるものほど、難しい。WAR IS OVER―たった三つの単語の組み合わせを、我々が未だ果たし得ないように。

確かにジョンは、この世界を生き抜くにはナイーヴすぎたのかもしれません。けれど、その純粋な魂があればこそ、こんなに多くの人の心に残るのだとも思います。平和的な印象の強い彼の、戦士としての一面と、短すぎた蜜月に浸る、一人の男としてジョンを取り上げた、見応えあるドキュメンタリーでした。