金宮さん

ソウルメイト/七月と安生の金宮さんのレビュー・感想・評価

ソウルメイト/七月と安生(2016年製作の映画)
4.0
『少年の君』のデレク・ツァン監督作品。今作ではっきりしたんですが、この監督は王道を下敷きにそこは充分すぎるほど楽しませておきつつ、さらに一味加えてスパイシーにする天才ですね。

自由奔放な安生と保守的な生き方を美徳とする七月は、正反対の考え方ながらお互いがかけがえのない友人。そこに七月の恋人、家明が登場することによりゆっくりと嫉妬ねじれが発生していくストーリー。

シンプルな友情&三角関係モノとしてもつくりが丁寧なので、さらーっと観てられます。手紙のシークエンスでの心情表現は鑑賞者がうっすら感じていた2人の印象に、説明過多の臭みなくお墨付きを与えるお見事な演出で安心して観てられるーと思えます。

ドロドロ恋愛模様そのまま終わるかと思いきや終盤で2,3回急カーブし、あっと驚かせれる。でも別にこの仕掛けに頼りきってるだけではないので、下品にならず深く印象に残るための装置としてしっかり機能していました。

今作の主人公2人のように自分と正反対の考え方を否定嫉妬しながらも、尊重できるということは人生を豊かにする。安生は七月の「こうなりたい」を理解し執筆することで、自分の人生を振り返ることもできた。いつかあの小説について娘に話すこともあるのかな。そのとき娘は2人の母親から自由と堅実双方を学ぶんだろうなあ、と想像するとぐっときます。

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・冒頭の映像美に岩井俊二監督の風味を感じます。今作はラブレター&花とアリス。『少年の君』はリリィシュシュと言えなくもない。
金宮さん

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