わたべ

勝手にふるえてろのわたべのレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
4.4
『勝手にふるえてろ』を観賞した人間の全てが主人公 江藤ヨシカを演じた松岡茉優を称賛するだろう。言わないヤツはさすがにアンチ松岡茉優かただの逆張りを疑う。どんなにこの映画が肌に合わなかった、気に入らなかったとしても「松岡茉優は良かったよね」くらいにはならないといけない。そのくらい自明のことである。

内容はというと、だいたいがヨシカが一(北村匠海)のことを勝手に考えて動いたりしつつそれにニ(渡辺大知)がこれまた勝手にふりまわされる、という具合になっていて、第三者(観客、他の登場人物)から見て特に大きな何かが起こるわけではない。
事件や出来事ではなくキャラクターの心情がすべてを引っ張っていく作品といえるけれど、先に述べた松岡茉優の演技やハイテンポな会話劇や映画的なギミックを駆使し、観客を飽きさせないような工夫がたくさんある。

小道具の使い方も気が利いていて、靴や付箋なんかも状況や心境を表すアイテムとしてとても丁寧に使われているのだけど、やはりキーアイテムともいえるアンモナイトの化石が特によい。
アンモナイトの殻はご存知のように巻き貝状になっているので外側からなぞっていくとグルグルまわって内側に収束していく。これだけでヨシカの性格をかなり端的に表現している気がするし、さらに「絶滅」やら「海の中」とか「異常巻き」とかいうキーワードも補足されて万全というほかなし。
小道具以外でも生活感の出し方もけっこううまくてとにかく全体に語るべき部分がたくさんあって優れた映画ダナーと思う。

そしてその「語るべき部分」「優れた」を松岡茉優が全ての面で喰っちゃう勢いなわけで、これはもう驚く以外にない。
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