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勝手にふるえてろのKYのレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
3.8
芥川賞作家・綿矢りさによる同名小説の映画化で、恋愛経験のない主人公のOLが2つの恋に悩み暴走する様を、松岡茉優の映画初主演で描くコメディ。

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落差の描き方で魅了する映画だった。

序盤の『街の人々とコミュニケーションをとる描写』は中盤ひっくり返す事で、主人公がプライベートで仲の良い友人がいない寂しい日常を際立たせているし、

自意識を貯め続けながらそれをぶつけない弱い女子像だからこそ、後半糸が切れて人に爆発させる描写の強烈さが際立ってたし、

二は、自己完結的で一方的ながらも悪者にならない典型的なモテない恋愛スタンスがあったからこそ、クライマックスで主人公と心と心でコミュニケーションをとる姿がめちゃくちゃ男前に見えた。

何よりその落差を全編に渡って実現できたのは、演技の幅において今右に出る者のいない松岡茉優だからこそ。

キャラクターとしても極端に記号的にデフォルメせず、落差で色んな表情を見せる事で登場人物に厚みが増し、結果等身大女子としてもきちんと存在してた。

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ただ、落差が面白い映画はそれが表面化しない前半がかったるくなるケースが多い。その例に漏れてはいなかった。前半は主人公が自意識をこじらせた『よくあるキャラクター』に見えかねなくて見るのがダルく感じた。

前半はプロット自体も意外性がなく一直線にずっと好きだった男と再会し砕ける展開に進んで行くし、主人公の葛藤もさしてないので見ている自分も無感情に展開を追うことになってしまった。

前半『二人の男、どっちが良いか』を観客に迷わせたらある程度の引きになるとは思うんだけど、二が変な男に描かれすぎててその余地がない。その意味で二は『つまらない男』程度に留めて欲しかった。

別にその程度に収めてもクライマックスの二の落差に支障はないし、むしろ前半の気持ち悪いキャラを排した方がより最後イケメンなギャップを味わえたと思う。
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