だいき

勝手にふるえてろのだいきのレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
4.4
2017年映画136本目。

松岡茉優無双。

他人と話すのが怖い、傷付くのが怖い。
だから孤独を否定し、妄想の世界へ逃げ込む。
そんな主人公の「イタさ」は、多かれ少なかれ誰もが持ち合わせているはずだ。
正直、演出はクサいし、納得できない展開もあるが、中盤のあのどんでん返しは巧妙すぎるし、表現として響いた。
確実に映画ならではのインパクトだし、急に跳躍が起こる感じも好きだった。
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「イタい系主人公モノ」は主人公のイタさの反面、どこか憎めないキャラクター造形で、観客の興味を惹きつけるが、本作は性格の悪さの裏側に愛嬌がある主人公ヨシカを松岡茉優が好演して魅せる。
脳内ダダ漏れな独り言劇はもちろん、そのアンモナイトの化石を買うほど絶滅した生物好きという奇妙な設定が可愛い。
実にこの「もうすでに終わっているモノが好き」という設定は、終わったはずの中学生の頃の同級生を10年以上かけて愛している恋愛の様子とも重ねて語られた。

大九明子監督の繊細な音使い演出や、女性を美しく撮る手腕も印象的だが、兎にも角にも松岡茉優の演技力を全面に押し出し、それが成功した時点で本作はかけがえのない作品となった。
主人公の行動による結果と責任を重く主人公に負わせることで、主人公ヨシカの気付きと成長を誠実に描く。
彼女の温かかった空想の世界から一変して、ヨシカに冷たい現実を気付かせる。
彼女を襲う突然の孤独、その孤独を緩和するのは紛れもなく現実に存在する他者の存在であるというラストにも納得。
勝手にふるえてた。
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