P1島

アメリカン・フェイブルのP1島のレビュー・感想・評価

アメリカン・フェイブル(2016年製作の映画)
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80年代アメリカの農民たちの知られざる苦しみの歴史と、とある農家の少女の幻想的主観のぶつかり合い……
現実と幻想が交錯する物語、アメリカ版『パンズ・ラビリンス』、という触れ込みだが、実際はかなり現実寄り。現実と夢の境界ははっきり分けられているし、そもそも幻想的な要素はトウモロコシ畑の中に現れる黒馬に跨った巻き角の騎士の存在くらい。
ただ、農民の一家が地域の農民たちの土地を買い叩いて自殺に追いやっている造成業者の男を捕らえてサイロに監禁するという設定はすでに十分すぎるほど奇妙で、幻想の領域のギリギリ手前。(この、幻想の領域の一歩手前であえて現実に留まり続ける様は、カルロス・ベルムト監督の『マジカル・ガール』を思い起こさせる)
監禁されている人物の視点から描けばありがちな密室ホラーになっていたところに捻りを加えてくれた点、あまり語られることの無いレーガン政権下のアメリカの暗い歴史に光を当ててくれた点には惜しみない賞賛を贈りたい。
『マジカル・ガール』にも言えるけど、個人的には幻想への一歩を踏み出してほしかった。たとえば主人公の少女ギティは、事故で意識不明になった父を造成業者が不思議な力で回復させたと思い込んでいるのだが、これを単なる「思い込み」で終わらせてしまうのは勿体無く感じる。金持ちオヤジを監禁する話より、農民の生き死にを支配するパワー(魔力)を持っている人物を監禁する話の方がよりFable(寓話)してないでしょうか?

散々暗さを強調しましたが実はかなりユーモア溢れる映画でもあり、前半はコメディ映画かというくらいウケを取れてました。こういうアメリカ映画らしい明るさも魅力。
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