ゴストジシネマ

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のゴストジシネマのレビュー・感想・評価

3.7
Netflixでの配信が終了とのことで慌てて鑑賞。
前半はペンタゴンペーパーズを手に入れるまでの話で、登場人物の関係や立場を理解するので精一杯であった。
後半は前半よりも話がわかりやすく、起伏のある展開で引き込まれた。

ベトナム戦争やペンタゴンペーパーズ、アメリカ含めた世界の近現代史の知識があった方がもちろん楽しめるが、私のようにそれらの名前を聞いたことがあるという程度でも「報道の自由vs国家権力」というわかりやすい構図なので理解でき面白いと思う。

ペンタゴンペーパーズの掲載反対派の新聞社の社員や家族、経営への打撃といった主張も一理あり、アメリカだから報道の自由が守られたという簡単な話ではないことがわかる。さらに、ニューヨークタイムズではなくポストという地方紙に焦点を当てたことで、掲載か否かという葛藤をより顕著に描かれていた。

個人的には、アメリカという豊かな国で新聞社の人間が職を失うというコストと、ベトナムの地で何人もの命が失われていくコストでは後者の方が圧倒的に高いので、この報道で戦争が早く終結するのであれば、公開に踏み切るべきだと考えていたのでこの映画のストーリー、史実は世の中捨てたもんじゃないという気持ちにさせられた。

経営者であるグラハム、顧問弁護士、役員、記者、印刷担当者、デスク、判事、ある意味ニクソン大統領はじめとした政府の人間達も、それぞれが各々の立場、役割を全うしようという姿勢のぶつかり合い、協力が印象的であった。

ペンタゴンペーパーズの掲載に踏み切ったワシントンポストに他の新聞社が続々と続いたシーンは鳥肌が立った。果たして今の日本、世界のマスメディアが同じ立場に立たされた時そのような行動を取るだろうか?

ワシントンポストがペンタゴンペーパーズ を掲載に踏み切れたのもマスメディアだけの力ではなく、こういった国家の隠蔽や不正を公開すれば国民や市民から肯定的なリアクションがあるはずだという期待から踏み切れたのだと思う。(実際にベトナム戦争への反戦ムードが高まった)
翻って今の日本をはじめとした世界のマスメディア、市民はどうだろうという気持ちにさせられた。政府に忖度している市民、どうせ何も変わらない、私には関係ないという無力感に苛まれた市民、政府に気を使うマスコミなどが増えてきているような気がしてならない。
改めてこの映画を見て現代の民主主義の在り方を考える人が1人でも増えればと思う。
また、タイプライター、電話、紙といった物がこの映画の時代は主流だったが、現代は中国の様々な検閲・弾圧、ウィキリークスによるアメリカなどの情報収集の告発などにあるように、この映画の時代より国家の監視というのはやり易い環境だと思う。そんな今こそ"自由"の重要性は増していると感じる。

一つ気になった点として、私が見逃していただけかもしれないが、ワシントンポストに情報を提供してくれたヒッピーの女性は何者だったのだろう?
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