MikiMickle

地獄愛のMikiMickleのレビュー・感想・評価

地獄愛(2014年製作の映画)
3.7
『ハネムーン・キラーズ』同様に1940年代に起こったロンリーハーツキラー事件を扱い、現代を舞台とした作品。

遺体処理を仕事とするシングルマザーのグロリアは、友人が勝手に登録した出会い系サイトでミシェルという男と出会う。出会ったその日に彼に惹かれたグロリア。しかし、彼は結婚詐欺師だった。
グロリアも元々はターゲットの1人だったのだが、彼の正体を知ってもなお、彼への愛は揺るぎず、子供を友達に預け、ミシェルの姉妹だと偽り、詐欺行脚へとついて行く。
しかし、彼が他の女と寝る事に我慢ならないグロリアは嫉妬にかられ、女性たちを次々と殺 していく…


前半、突然のミュージカルシーンに衝撃を受けるw ファヴリス・ドゥ・ヴェル監督の『変態村』を彷彿とさせる不気味さ……
からの、振りかぶったノコギリ‼‼ ちょっとっっ‼‼そこでモザイクとか、ほんと無しでしょ‼‼と…
そこはきちんと見せないとダメだと思うのよ……(これはホラー目線では無く、愛と狂気のリアルさを魅せるという面で)
と、それは置いておいて、

愛欲・性 欲・嫉妬…
善悪などという概念のない身勝手な行為。
痛々しく、愛憎に満ちた逃避行。
女は彼に出会い、母から女へとなり、ただただ愛を求め、下着姿で駄々っ子の様に嫉妬に狂う。まさに狂気。頭では“家業”とわかっている。しかし、感情は止まらない。
まるで子供の様に癇癪を起こす女。
それをなだめる不埒な男は、平気でそれを裏切る。女と同じく幼稚さのある男。
彼は事故の後遺症により性 欲を抑えきれないのだが、映画ではそういった事実の説明もないので、より一層その裏切りが非道で……
まさに負のスパイラル…
痛々しい幼稚さが、もどかしさと嫌悪感と誰しもにあるかもしれない狂気の一線を感じる。
愛故の嫉妬の狂気はどんな狂気よりも闇なのかもしれない…

1時間半という短さだが、見応えのある悪と闇とおぞましさだった……

『ハネムーン・キラーズ』が切なさと痛々しさを感じるのであれば、
『地獄愛』は人間の歪んだ負の本質を部分を見せつけられるような……誰しも実はある痛みをえぐるような感覚。
事実と違い、グロリアの設定を母とした所にも、監督の意図を感じる。闇を魅せる悪意…

愛と狂気は紙一重。
ふと足を踏み違えば、闇へと落ちる…
ファヴリス・ドゥ・ヴェル監督の闇の三部作の、『変態村』に続く2作目。まさに闇。

深閑とした闇の中の、渦巻く諸刃のマグマ。薄く尖った熱い刃が、マグマの中で歪み、歪み、歪み……ポキッと折れるような……
2人で見る深夜の映画館。『アフリカの女王』。主演のハンフリーボガードに憧れるミシェルと、それに寄り添うグロリアのシーン。この闇の中で、些細な純粋な愛、二人が目指していた愛の形を感じたりもする…
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