Ryan

アネットのRyanのレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
4.4
まるで"ピノキオ"


ストーリー
挑発的なスタイルのスタンドアップ・コメディアンを務める男性。彼は、国際的に有名なオペラ歌手と情熱的な恋に落ち、世間の大いなる注目を集める。しかし、2人の間にミステリアスな娘が誕生し、彼らの結婚生活は少しずつ狂い始める。


主演 アダム・ドライバー
監督 レオス・カラックス


第74回カンヌ国際映画祭、監督賞受賞作。

まさに"衝撃"と"ファンタジー"
これは現実ではなく幻想なのだろう。
常人には理解できない所にこの映画はある。
素晴らしく研ぎ澄まされており、その毒牙にキャラクター自身が滅ぼされていく姿は滑稽であり爽快。
他にはない唯一無二の映画と言っても良いだろう。

セリフがほとんどなく、あるのはライブ録音のミュージカル調。
そして映像的表現により、体験したことのない道の世界へと誘われる。
個人的に「ララランド」より好みである。

意味不明な言葉の羅列の後に襲われる"人間としての倦怠感"
妙にキャラクターの心情変化を察知させられる"霧"や"家のプール"など。
ただの映像的表現だけではなく、物語として成立する面白さがあった。

ロックオペラであり革命児「スパークス」の原案、音楽を基に描き切った秀逸な作品だろう。
音楽の表現方法と歌詞に対する監督自身のこだわりと答え合わせが次々と押し寄せ毎度驚かされる。

それでいてこのラスト。
誰しもが絶句し唖然となる。
最後まで驚きに満ちた奇跡的な映画であった。

アダムドライバーとマリオンコティアールの演技は完璧で、序盤の2人で行う演技合戦からは目が離せない。
そこに現れる「ビッグバンセオリー」の刺客サイモンヘルバーグ。
とてもバランスの取れた完璧な布陣であった。

これは映画館で観るべきダークファンタジーだ。いつかチャンスがあれば必ず足を運ぼうと思う。
Ryan

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