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世界は今日から君のもののくまもんのレビュー・感想・評価

世界は今日から君のもの(2017年製作の映画)
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散歩をしていて、4年くらい前に常連だったバーの前を久しぶりに通った。
当時のわたしはアル中気味、不眠気味で(不眠は今もだけど)、不規則な生活も相まって泥酔していないと眠れなかったこともあり、その店には一年以上に渡り週1、多い時で週3というかなりの頻度で通っていた。

何も酒を飲むだけが目的だったわけではない。制作会社出身の男の子と仲良くなったことで、わざわざ約束を取り付けなくてもその店に行きさえすれば、雑多な話で盛り上がれることがなにより楽で、心地良かったのだと思う。

気付けば彼とは知り合って2年近くの月日が経っていた。わたしたちは男女だけど男女ではなく、あくまでも友達で、他の常連客にその関係性をいじられながら、変わらず取り留めのない話で盛り上がっていた。
毎週会っているのに、互いの連絡先すら知らない。その店以外で会ったこともない。帰り際に次は何曜日に来るね、と伝え合うだけ。

ある日店にいくと、彼は完全に潰れていて、店の隅で小さく丸まって寝ていた。
横で起きるのを待っていたけれど全く起きる気配もなく、ついに彼は閉店時間の朝5時まで起きなかった。
無理やり起こして店を出る頃には、外はもう明るくて、明るいところで彼を見るのは初めてだなあとぼんやり思った(店はめちゃくちゃ暗かった)。その瞬間に手を繋がれて、その手の冷たさに驚いていたら、「ホテル行こっか」と言われた。あの時の彼の目を、わたしは今でも思い出せる。
そのまま店から100m足らずのラブホテルに迷いなく入り、彼が選んだのがこの映画。
行為が終わっても映画は流れ続けていて、なんでこの映画を選んだの?と聞いたら、割とはっきりと答えてくれた記憶があるけれど、その答えがなんだったかは覚えていない。

彼と会ったのはその後2回だけ。行為はその一度きりで、わたしたちは恋人でもないしセフレでもないよねということで結論づき、「でもなんかあの夜は良い思い出になったよね」と言ったら、「そういうことを言うところが好きだったよ」と言って彼は笑った。その直後にコロナもあって店自体に行かなくなってしまい(わたしが別の人と付き合い始めたのもあるけど)、あいもかわらず連絡先を交換していなかったわたしたちは会う術を失った。

そんな記憶を思い出しつつ、何故彼はあのときこの映画をチョイスしたのだろうと思って、あの日ぶりに見返してみたけどやっぱり理由はわからなかった。
全然映画のレビューじゃないっすね。
エモ小噺でした。あざした。
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