kogureawesome

蜂の巣の子供たちのkogureawesomeのレビュー・感想・評価

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)
5.0
『雨月物語』の溝口健二監督は「清水君は天才です。僕や小津君は努力家にすぎない」と言っている。
また俳優の笠智衆は、「僕は、清水監督の作品が実に好きで、自分が出してもらったのを含め、いいシャシンがいっぱいあったと思います。小津先生の作品は、いろんな人があれこれ言いますが、清水オヤジのシャシンをきちんと評価する人がいないのが不思議でなりません。」と嘆いている。
『蜂の巣の子供たち』は清水宏の戦後の代表作。インディーズ映画の走りだ。
復員兵が下関駅に降り立つと戦災孤児が寄ってくる。8人の孤児たちと話すうち復員兵は「孤児かい?僕も戦争前は施設にしてお父さんもお母さんもないんだ」
「それじゃ、先輩だね!」と子供の一人が言う。
復員兵は働きながら広島、神戸を通って自分が育った施設に戻ると言う。
ストリートチルドレン的な闇市ライフでどうもよからぬことしている子供たち。
元締めの小悪党(片足を無くしている)とはぐれ、復員兵と旅を共にするようになる。
素人がただカメラを無造作に置いているかのように見える構図が抜群に良い。台詞はわざとらしいとこもあるが出演者の生き生きとした仕草がセリフ以上に意味がある。
「この子供達に見覚えのある人はいませんか?」と表記された字幕から『蜂の巣の子供たち』は始まる。 清水宏が面倒を見ていた本当の戦災孤児の8人を映画に出し、他に登場する大人も全員素人。
即興的な演出と全編ロケで当時の雰囲気が真空パックされている。
他の誰にも似てないので清水宏は一番好きな監督の一人だ。
kogureawesome

kogureawesome