三日月ばなな

シェイプ・オブ・ウォーターの三日月ばななのレビュー・感想・評価

3.9
『神の形』
ストーリー冒頭は、ギレルモ・デル・トロ監督作風惜しまずの最高のシーンで、一気に物語に引き込まれた。残酷さとファンタジーを融合させた、いい意味で変態的な作風は健在。
R15指定以上の過激なシーンがあるが、ただのファンタジー映画にしてしまわないためのスパイスがよく効いている。ただ、どの作品にも言えることだが、モザイクがかかると途端に気持ちが萎えてしまう・・・。あのベッドシーンは特に生々しくていらなかったというのが後半まで引っかかって自己評価、最高点獲得にはならず。
ギレルモ・デル・トロ監督は、ファンタジーの中に上手く、現代に送るメッセージを入れ込む天才だと思っている。主人公が友人に〝彼〟と私の違いはなにかを問いかけるシーンには、障がい者や肌の色の違い、性的マイノリティなどを持っているからといって別の生き物のように接したり、迫害し、手助けしないなら私達も人間ではないという意味もあったのではないだろうかと考える。
現に、作中にはそれぞれ何かしら社会的にしがらみを持ったキャラクター達が活躍する。
ただのファンタジー映画に終わらせないところが、ギレルモ・デル・トロ監督らしい。
パンズ・ラビリンス同様、完全な悪役がいるところも分かりやすかったが、今作はわざと人間らしさを出すために一見幸せそうな家族との描写を入れたと思われる。まんまと店員の口車に乗せられて新車を購入するが、のちのちの展開になるのはお約束。パンズ・ラビリンスの終始暗い感じとは異なり、ジョーク混じりでいい塩梅だった。
ギレルモ・デル・トロ監督作品にしては、素直過ぎる展開だったが、鑑賞者の多くが望むストーリーだったと思う。パンズ・ラビリンス越えはしなかったが、青緑色の水の世界で育まれる美しくも残酷な愛の物語に魅入られたのは確かである。