まゆ

シェイプ・オブ・ウォーターのまゆのレビュー・感想・評価

5.0
さすがアカデミー賞を獲っただけあって物語、美術、脚本もろもろ含めとても素晴らしい作品です!
私は公開当時劇場で見に行って号泣した思い出があります。笑
監督が子供の頃から温めていた物語で配給会社の規制は受けたくないからと自ら資金も出したりしたそう。
だからでしょうか、監督の長い間の想いが昇華されたかのようにあまりにもピュアで美しい作品でラストには毎回涙が止まりません。

まず冒頭の水の中に漂う夢の中のシーンが幻想的でそこで惹き込まれてしまいます。
タイトルがシェイプオブウォーター=水の形ということもあり水に形といったものがないように愛の形も明確にこれといった定義はなくさまざまにあるんだよと言うことを教えてくれるようです。
イライザが出会う半魚人とも呼べる異形の存在の"彼"と出会い、手話や音楽を通して心を通わせるシーンはある意味恋愛映画の胸キュンシーンでもあります💘
なぜイライザが人間ではない"彼"に惹かれたのかはこれといって詳しく描かれてはいません孤独感をずっと抱えていたであろうイライザにとって異質の存在として扱われる"彼"は放っておけない存在だったと思われます。
そして何よりこの半魚人の"彼"の造形、半魚人といえどもしなやかな細マッチョ体型で独特の凛々しさと美しさがあってなのに仕草はどこか可愛らしくてとっても魅力的!恋に落ちるのもわかるよ〜〜と思ってしまうのは私だけじゃないはず....!笑
半魚人を演じた中の人はダグ・ジョーンズという俳優が演じていますが"彼"の野性味とピュアさを見事に体現していて素晴らしいです!👏
あ、全CGとかじゃなくて中に人がいるだなんて全く感じなかった〜思うくらいの自然さです。

映画館の上にあるアパートで一人暮らししている口が聞けないイライザ、アパートの隣人であるゲイのジャイルズ、仕事場の同僚でありイライザを気遣ってくれる黒人女性のゼルダといった登場人物達は不器用ながらも良い人達ですが1962年当時からしたら強い差別や偏見を受けやすい部類ともいえます。
だからこそでしょうか、彼らはイライザが連れてきた半魚人の"彼"に対して卑下せずに理解してくれる存在です。
そして打って変わって軍の職員である悪人のストリックランドが出てきますが彼は強いことが正しい、勝つことが一番なんだ!という思想の持ち主で異端の存在である半魚人には征服しようと徹底的に虐待するという残忍さ。でも地位や名誉がありながらもどこか満たされてないようにも見えます。
そんな対極的な登場人物達と突然現れた半魚人の"彼"を通して見ると本当の幸せや真心とはなんなのだろうかと問いかけてくるようです。そんな本作はマイノリティ的に窮屈な思いをしている弱者に焦点を当てていて彼らなりの社会の抑圧に対しての対抗の物語でもありイライザがジャイルスに"彼"を助けたいと訴えるシーンは胸に迫ります。

この映画のヒロインは若く美しいという典型ではなく普通の1人の女性であり半魚人の"彼"はヒロインと結ばれて人間の王子様になるということもありません。
ですが目にわかるものよりも水の形のように目には見えない2人の純粋な愛の姿は遥かに超えて美しいのです。
自分にとって大事なものは何かを改めて考えさせてくれる素敵な映画です。
まゆ

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